みなさん、こんにちは。今回は、部下の言葉にイラッとしてしまったときにどう対処するか、というテーマでお話していこうと思います。
みなさんは、部下からの言葉についイラッとした経験はありますか。部下をもつ方なら、一度は直面する感情ではないでしょうか。
実は私も部下から思ってもいなかった言葉を返され、「何でそんなこと言うんだ」と言い返したくなった経験があります。
今回は次のシチュエーションを想定して、どのように上司として対処したら良いのかを考えていきましょう。
そのイラッという感情、原因はどこにあるの?
【シチュエーション】
入社3年目の部下Bくんはプライドが高く、「すみません」と素直に言えないタイプだ。先日、急遽頼んだ仕事を確認すると、とても先方に提出できないクオリティの資料を提出してきた。
「これでは先方に提出できないな」と伝えると、「私は言われた仕事をやっただけです」と言う。
部下Bくんからこのような言葉を返されるのは、今回がはじめてではない。たびたび反論するような言動をとる。上司は部下Bくんの言葉に思わずイラッとしてしまった。
いかがでしょうか。シチュエーションの上司と同じように、部下の言動に対して怒りの感情が湧いてしまい、「勢い余って怒鳴ってしまった」「重苦しい雰囲気にしてしまった」という経験をしたことのある方もいるのではないでしょうか。
でも、実はこの「イラッ」という感情は、相手が作り出しているものではないんです。もし、怒りの感情の正体がわかり、それを自分で制御できるとしたら、いかがでしょうか。
選択理論で紐解く「イラッ」の正体
本連載の1回目「指示命令するだけでは、主体性は生まれない!? 部下のモチベーションを引き出す上司の考え方」では、人の行動の原理をひも解き解明している、選択理論心理学をご紹介しました。前回はその概念の1つ、『上質世界』を解説しました。
上質世界とは、脳内の記憶の世界で、自分が強く関心をもっているイメージ写真が入っています。今回も前回同様、あるアーティストが大好きで、上質世界に入っているAさんを例に考えてみましょう。
たとえば、誰かがこのアーティストのことを「微妙だよね」と言っているのを、Aさんが聞いたとします。そのとき、Aさんはどのような感情を抱くでしょうか。おそらく、「イラッ」としたり、「悲しい」「悔しい」という感情を抱くのではないでしょうか。
選択理論で紐解くと、このときのAさんの内側には、自分が理想とする状況(大好きなアーティストが応援されている)と現実(誰かがアーティストを微妙だと言っている)の2つの場面があります。この2つを比べたときに生まれるギャップが、フラストレーションを発生させているのです。
これは、アーティストのことを「微妙だ」と言った誰かが、Aさんを怒らせたり、悲しませたりしたわけではありません。つまり、人は「外側からの刺激に反応」して感情が現れるのではなく、自分の内側にある「理想と現実のズレ」が様々な感情となって現れてくるのです。
それでは、Aさんの例を今回のシチュエーションに当てはめてみましょう。上司側はつい、「理想とする部下=上司の言うことを素直に聞き、完璧に仕事をこなす部下」というイメージ写真をもってしまいがちです。
そうすると、現実の「頑固で質の低い仕事をする部下の言動」に対してフラストレーションが発生します。つまり、「部下はこうであるべきだ」という自分の理想を相手に求めてしまうため、「イラッ」という感情が湧いてくるのです。
そう思うと、「イラッ」という感情との向き合い方も、変わってくるような気がしませんか。
この「イラッ」という感情とどう向き合い、感情に流されない自分になるのか。このことについては、<部下からの言葉に「イラッ」と...どう対処する?【リーダーの「コミュ力」vol.2 後編】>で詳しくお伝えします。(橋本拓也)
【プロフィール】
橋本 拓也(はしもと・たくや)
アチーブメント株式会社 取締役営業本部長
2006年アチーブメント株式会社に入社。新規事業として家庭教師派遣事業を立ち上げたのち、医師・弁護士・会計士などの専門職業人、経営者やセールスパーソン等の目的・目標達成の支援を行うパーソナルコンサルタントとして活躍。2017年同部門の東日本エリア担当マネジャーを経て、2021年執行役員、2022年取締役に就任した。100名以上のメンバーマネジメントに携わる傍らで、『頂点への道』講座 アチーブメントテクノロジーコース・ダイナミックコースのメイン講師を担う。これまで各種研修で担当してきた受講生の数は2万名を超える。