指示命令するだけでは、主体性は生まれない!? 部下のモチベーションを引き出す上司の考え方【リーダーの「コミュ力」vol.1 後編】

   みなさん、こんにちは。

   人材教育コンサルティング事業を手がけるアチーブメント株式会社の取締役営業本部長、橋本拓也です。

   これから、部下が育つ上司のコミュニケーション力というテーマで、お役立てできる情報を発信していけたらと思います。

   みなさんは、マネジメントするために部下とどう接していますか。今回は、そんな部下のマネジメントに苦労している上司の方に向けて、部下のモチベーションを引き出す「考え方」を解説したいと思います。

上司の仕事は「仕事を面白くする」こと

   <指示命令するだけでは、主体性は生まれない!? 部下のモチベーションを引き出す上司の考え方【リーダーの「コミュ力」vol.1 前編】>の続きです。

   【前編】を読んでいただいて、「人の願望は内側にあって、外から変えることができないのは分かったけど、じゃあ、上司にできることはないの?」と思われた方もいると思います。安心してください。上司にできることはあります。それは、仕事を面白くすることです。

   次のケーススタディを見てみましょう。

<「すごい」ビジネスパーソンになりたいBくん>

入社4か月の新入社員Bくん。営業の仕事をしていますが、先輩社員から細かいフィードバックを受けて、いじけてしまい仕事にも身が入らない様子です。

上司のC課長はBくんと面談を行い、将来どんな社員になりたいのか聞きました。すると、Bくんは「すごい」ビジネスパーソンになることを理想としていることを話してくれました。

そこでC課長は、Bくんはすごい仕事をしたいのか、褒められたいのか、どちらなのか質問しました。Bくんは迷いながら、「すごい仕事をしたい」と答えました。

さらにC課長は、ビジネスの基礎がしっかりしていないビジネスパーソンと、社内でたくさんフィードバックを受けるけどビジネスの基礎がしっかりしているビジネスパーソン、どっちの方がすごい仕事しそうか質問しました。

Bくんは少し考えてから後者だと答えました。そこで、C課長はこう提案しました。

「こう考えてみたらどうかな。いまの営業の仕事は、将来理想とするビジネスパーソンになるためのトレーニングだと。いまの仕事に何を求めるかはBくんの自由だから、ビジネスの基礎を身につけていくステップだと意味を付けるのも、一つの選択だと思うよ」

C課長の話を聞いて、Bくんは少しずつフィードバックを肯定的に捉え、自発的に仕事に取り組むようになりました。

   Bくんは「すごい」ビジネスパーソンになりたいという願望を持っていました。

   しかし、その願望はフワッとしていて、フィードバックを受けているいまの自分とのギャップに、フラストレーションを感じている状況でした。

   そこで、C課長はBくんの願望を具体的にしていき、願望を叶えるためのトレーニングの場になると提案することで、フラストレーションを感じていた状況が理想の自分に近づく状況へと変化していき、仕事に主体的に取り組むようになったのです。

   願望と仕事を結び付けるには、まずはその人の願望を知り、より具体的にすることが必要です。そのうえで、その願望と仕事がどうやったら結び付くのか、つまり、仕事を面白くすることができるのか考える必要があるのです。

   仕事に面白さを見出せるようになれば、部下は主体的に仕事に取り組むようになるものです。

   部下が主体性にあふれ、自ら進んで仕事に取り組むようになれば、ある意味、マネジメントは必要なくなります。そして、「デキる上司」がやっているのは指示命令ではなく、部下の願望と仕事を結び付けることだったのです。

まずは、よい人間関係から

   部下の願望を知り、それを仕事と結び付けることの大切さは理解していただいたと思います。しかし、出し抜けに「君の願望はなに?」と聞いても部下は心を開いてくれません。「え...。いきなりなんですか?」といわれるのがオチです。

   部下から願望を聞き出すには、部下から信頼される存在になることが大切です。部下との面談を設けて、部下が何を大切にしているのか、【前編】で示した「5つの基本的欲求」のどの欲求が強いのか、話を聞いてみましょう。

   最初は簡単には心を開いてくれないかもしれません。しかし、上司が本気で部下の幸せを願い、願望を知りたいと関わることで、きっと部下は将来のビジョンや、理想の将来像を話してくれるはずです。

   難しく思われる方は、最初は部下の趣味を聞いてみたり、どんなことに興味があるのか聞くことから始めてもいいかもしれません。いずれにしても、まずは上司から部下に歩み寄って願望を知る努力をしてみましょう。(橋本拓也)


【プロフィール】
橋本 拓也(はしもと・たくや)
アチーブメント株式会社 取締役営業本部長

2006年アチーブメント株式会社に入社。新規事業として家庭教師派遣事業を立ち上げたのち、医師・弁護士・会計士などの専門職業人、経営者やセールスパーソン等の目的・目標達成の支援を行うパーソナルコンサルタントとして活躍。2017年同部門の東日本エリア担当マネジャーを経て、2021年執行役員、2022年取締役に就任した。100名以上のメンバーマネジメントに携わる傍らで、『頂点への道』講座 アチーブメントテクノロジーコース・ダイナミックコースのメイン講師を担う。これまで各種研修で担当してきた受講生の数は2万名を超える。

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