コロナ禍で注目の「餃子無人販売店」...1400店舗に拡大も、直近では出店数が鈍化 競争が激化...誘客戦略のカギは「味や品質、価格に見合うこだわり」商品力アップを!

   帝国データバンク(東京都港区)は2023年9月15日に特別企画「餃子無人販売店」動向調査を発表した。それによると、「餃子無人販売店」の出店数は、2020年で131店、2021年で827店、2022年には1282店舗まで増加し、2023年7月時点では推計としておよそ1400店に上るという。

   帝国データバンクによると、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、外食産業の活況や巣ごもり需要の落ち着きによって、市場が飽和状態にあるとみられており、今後は商品の差別化や店舗展開の転換などにより、生き残りをかけた競争が激化していく見通しだ。

  • 無人餃子店の出店が鈍化(写真はイメージです)
    無人餃子店の出店が鈍化(写真はイメージです)
  • 無人餃子店の出店が鈍化(写真はイメージです)

出店数は鈍化傾向...市場飽和で閉店も 今後は利用者層の拡大がカギに

   この調査は、全国の「餃子無人販売店」のうち、帝国データバンクが店舗数・推移が取得可能な全国67事業者・ブランドを対象に集計した。また、企業信用調査報告書(CCR)ほか、外部情報などを基に集計している。なお、店舗数や初出店時期などは一部推定値を含んでいる。

(帝国データバンクの作成)
(帝国データバンクの作成)

   「ギョーザの無人販売所」は2021年頃から、コロナ禍で人との接触を避けた販売方法の一つとして注目された。帝国データバンクの調べによると、2020年度に131店舗だった店舗数が、2021年度には827店舗に急増し、さらに2022年度は1282店舗まで増加、したがって3年間で約10倍の出店数となったかたちだ。2023年7月時点では推計としておよそ1400店に上るという。実際、店舗を目にした人や利用したことのある人も多いのではないだろうか。

   もっとも、帝国データバンクによると、「足元では既存店舗の売り上げが減少傾向に転じたケースもあり、競争激化の影響が出始めている」という。しかも、増加を続けてきた店舗数も2023年度に入って、鈍化傾向に。同社は「店舗の閉鎖や事業の断念といった動きも見られ、市場は『飽和状態』に近づきつつある」としている。

(帝国データバンクの作成)
(帝国データバンクの作成)

   餃子無人販売店に進出した企業の出店時期(初出店時ベース)に注目すると、2020年度までに出店したのは「20.9%」、2021年度中に出店したのは過半数を超える「61.2%」、2022年度以降に出店したのは「17.9%」と、出店ピークは2021年度を境に、現在では鈍化の傾向がみられる。

(帝国データバンクの作成)
(帝国データバンクの作成)

   なぜ、餃子無人販売店は、ウケたのか――。帝国データバンクによると、「冷凍餃子の無人販売ビジネス」は、手軽な調理で人気が高い餃子が、巣ごもり下の買いだめ需要にこたえる冷凍食品としたことから、消費者に受け入れられた、と分析する。

   また、「餃子無人販売店」は、買う人にとっては、餃子1つの平均価格は「30.1円」程度であり、テイクアウトがしやすい。出店する側にとっても、省スペースで出店費用が安く、人件費がかからずに24時間営業できるなどのメリットがあると指摘している。

   こうした背景から、餃子無人販売を展開する企業のなかには、中華料理店や業務用冷凍食品メーカーがコロナ禍における販売不振を補うため、進出したケースも多かった。このほかにも、国からの「事業再構築補助金」など各種補助金制度の活用などによって、駐車場運営やクリーニング店といった他業種からの参入も多かったという。

「無人販売」という話題性以外の誘客戦略が求められる

(帝国データバンクの作成)
(帝国データバンクの作成)

   餃子無人販売店がウケた理由として、コロナ禍の巣ごもり下における、買いだめの需要に「冷凍調理食品」が合っていたこともありそうだ。

   総務省の「家計調査」によると、冷凍餃子を含む2022年度の「冷凍調理食品」の支出額は、2015年度以降は増加傾向で、とくに2022年度には1万円に近づくなど、コロナ禍の時期は「冷凍調理食品」への支出額も多かった。このあたりが、冷凍で売られている「餃子無人販売店」が受け入れられた要因となっていたのだろう。

   もっとも、今後の見通しについては、アフターコロナで外食需要が回復し、相対的に巣ごもり需要が落ち着く中での利用者層拡大がカギとなりそうだ。

   帝国データバンクでは、「日本冷凍食品協会が23年4月に行った調査では、自動販売機や無人店舗等で冷凍食品を購入した割合は男女ともに1割から2割にとどまった。利用者層の拡大余地は依然として残っているなかで、味や品質、価格に見合うこだわりといった、『無人販売』など話題性以外の誘客戦略が求められる」と指摘する。

   また、J-CAST 会社ウォッチ編集部が帝国データバンクの調査担当者に、誘客戦略について取材したところ、

「無人冷凍餃子販売店の難しさの一つに価格戦略を取れないことがある。無人販売である以上、おつりの出ない『一袋1000円』というスタイルは崩せない。そのため、ブームが一巡して、飽和状態にある市場では商品力が重要になってくる。たとえば、冷凍自販機で駅前に出店する、A5和牛など高級路線で差別化を図る、大手店舗では冷凍餃子と一緒に冷凍ラーメンを販売するなど、商品の価値を高め、厳しい市場では、1000円以上のおいしさの餃子を開発してリピーターを取り込む必要性がある」

   と話した。

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