【米国経済の動向】FRB(米連邦準備制度理事会)は2023年9月19~20日に開催していたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利のFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を5.25~5.50%で据え置いた。
ただ、ドットチャート(経済見通し)では、2023年末の政策金利予想の中央値は6月と同水準の5.50~5.75%となり、年内に0.25%の利上げを支持していることが示された。
9月のFOMCでの政策金利据え置きは、市場の予想通り
8月24~26日に開催された米国のカンザスシティ地区連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でパウエル議長は25日の講演を行い、「インフレを確実に抑制するためにさらなる利上げを実施する用意がある」と発言した。
だが、同時に9月のFOMCでは政策金利を据え置く可能性があることも示唆していたことから、9月のFOMCでの政策金利据え置きは、市場の予想通りだった。
FRBは2%のインフレ率を目標に、金融政策を行っている。パウエル議長はFOMC終了後の記者会見で、「適切なら一段の利上げを実施する用意がある。インフレ率が目標に向かって持続的に低下していると確信できるまで、政策金利を制約的な水準に維持する」との姿勢を示した。
さらに、パウエル議長は、「インフレ率を目標の2%へと押し下げるうえで十分に景気抑制的となるような金融政策スタンスを達成し、それを維持することにコミットしている」とも発言しており、年内に0.25%の利上げが実施される可能性を示している。
2024年末までの政策金利の中央値予想、6月予想4.6%→5.1%に引き上げ...ドル高・円安を招く
9月のFOMCでの政策金利据え置き、年内に0.25%の利上げが行われる可能性については、市場の予想通りの結果だったが、FOMC終了後に米国株式は下落し、為替相場はドル高・円安に動いた。
前日比で上昇していたNYダウは急落し、前日比76.85ドル安まで下落。ドルは1ドル=147円台半ばから1ドル=148円台前半に上昇した。
これは、公表されたドットチャートで、2024年末までの政策金利の中央値の予想が、6月予想の4.6%から5.1%に引き上げられたことによる。
6月予想では2024年末までの政策金利の中央値は1.0%ポイント低下すると予想されていた。ところが、これに対して、今回の予想では低下幅が0.50%ポイントに縮小した。これが市場では、高い水準の政策金利が長期化すると受け止められた。
なお、政策金利の中央値の予想は、2025年末までに3.9%、2026年末までに2.9%へと引き下げられると予想されている。
市場ではすでに、年内の0.25%の利上げによって、利上げ政策は終了との見方が織り込まれつつある。今後の焦点は2024年の金融政策に移りつつある。
ただ、パウエル議長は会見で、「金利が適切な水準に到達したと示す説得力のある証拠を見たい」と述べており、今後も雇用統計や消費者物価などの経済指標の結果が、FRBの金融政策の鍵を握っており、株式市場や為替市場を動かす材料となりそうだ。
FRBはインフレを抑制するため、2022年3月から利上げに踏み切り、2022年中に7回連続、2023年も4回の合計11回の利上げを行っている。(鷲尾香一)
【プロフィール】
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。