スウェーデンへの留学を決めたのは、「誰もやりそうにないこと」だと思ったから
――大学院をヨーロッパ方面にするかを決めたきっかけがインドだった、というのはどういうことでしょうか。
塩出さん 北海道大学在学中、私はインドのITベンチャー企業でのインターン経験があるのです。この時、インターンのハウスメイトが何人かいたのですが、うち2人がスウェーデン人女性でした。その2人と話しているうちに、スウェーデンの教育水準の高さを知り、スウェーデン王立工科大学の大学院への進学を決めました。
――なるほど! そんなきっかけが......。
塩出さん また、スウェーデンへの留学が、「誰もやりそうにないこと」だったというのもありますね。普通、ヨーロッパへの留学となると、やっぱりイギリスなどがメジャーだと思うので......。さらに言うと、修士課程には少し、「遊び」の要素があってもいいかなとも思いました。
――そういうことだったんですね。ところで、塩出さんは大学院の卒業を3か月繰り上げたそうですね。その理由は?
塩出さん それは、ヨットで広島から沖縄まで父と一緒に行くためです。
――そんなご経験も......。ここからは、どんな学びがありましたか。
塩出さん 大学生になるかならないかぐらいの頃、父がヨットを始めたことがきっかけで、私も乗るようになりました。大学院の修士課程を卒業するちょうどその頃、父が仕事を引退するので、卒業したら就職するまでの間で、一緒にヨットにならないか、と誘ってくれたのです。しかも、大学院の指導教授からは、修士論文を書けば早く卒業してよいとの許可を得て、満を持してヨットに乗り込みました。
――そういうことだったんですね。
塩出さん 航行期間は3か月でした。航行中、特に印象的だったのは、沖縄から奄美大島に向かう最中のオーバーナイトセーリングでした。夜間航行は危険なので基本的には避けていたのですが、この時はチャレンジしようと思ったのです。
――危険を押してのセーリングはいかがでしたか。
塩出さん もう、完全に「ナチュラルハイ」とでも言うべき状況になりました。その高揚感の中で、「やはり、人間は本来は大自然の中にあることが心地よく感じるようにできているんだろうな」という思いにも至りました。
実は、似たような感覚に襲われたことがそれ以前にもあり、それはさきほどのインドのインターンシップ中、ヒマラヤに行った時のことでした。どちらも、ただ単に感動しているというよりは、「人間が生物として反応しているような感覚」になったのです。
――「細胞ひとつひとつが喜んでいる」ということになるんでしょうかね。