「タレントは日々研鑽(けんさん)を積んでいる。その活躍の機会を奪うのもまた問題だ」
ジャニーズ事務所の性加害問題で、所属タレントの広告起用などを取りやめる企業が相次いでいることについて、日本経済団体連合会(経団連)の十倉雅和会長が、「待った」をかける発言を行なった。
同じ経済界トップの新浪剛史・経済同友会幹事が、真逆の「タレント起用は国際的非難になる」発言をしたばかり。ネット民の間では、十倉発言に驚きと批判の声が殺到している。
タレントはモノではない...不祥事企業の商品不買運動とは違う
経団連の十倉会長の発言が飛び出したのは2023年9月19日、定例会見の場。ジャニーズ事務所の故・ジャニー喜多川氏による性加害問題に対し、記者団からの質問に答えた。報道をまとめると、主なやりとりは次の通りだ。
――この問題を巡って、多くのスポンサー企業が広告起用を見直したり、企業の中には出演テレビ番組へのCM出稿取りやめを検討したりするなど、企業としての対応も注目されている。
十倉会長は性加害が長年にわたって行われてきたこの問題、そしてジャニーズ事務所の対応をどのように受け止めているか? また、今回のスポンサー離れ、企業が取るべき行動、あるべき姿についてどう考えているか?
十倉会長「大前提として、人格侵害は断じて許されるものではありません。
経団連では企業行動憲章で、『全ての人々の人権を尊重する経営を行うべし』ということを強く言っています。そのために、『経営者が自ら実行あるガバナンスを構築しなさい』と。グループ企業も含めて周知徹底を図ってください、と訴えかけており、これは引き続き強調していきたい。
ただ、私個人としては、今回の問題は不祥事を起こした、ないしはコンプライアンス違反をした企業の作った商品・製品を買わない、不買運動をするというのとは少し違うように思います。タレントの方々は日々研鑽を積んでおられるわけで、いわゆるモノとは違います。
もちろん、『人権侵害・犯罪は断じて許さない』と企業の基本姿勢を内外に示すことは大変重要だと思います。ただ、タレントの人たちはある意味被害者であって加害者ではありません。日々研鑽を積んでいる人の機会を長きにわたって奪うこともまた問題があると思います。
そういうことも含め、被害者救済と再発防止、これに最大限どう取り組めばいいかを、みなさんで検討すべきではないかと思います」
また、十倉氏が現在、大阪・関西万博の主催者である2025年日本国際博覧会協会会長であることから、こんな質問も出た。
――大阪・関西万博では、関ジャニ∞(エイト)をはじめ、関西ジャニーズJr.のメンバーが、関連行事やPR番組に参加している。万博という国際的に注目されるイベントに起用することについて、先ほどの人権侵害をふまえて、どう考えているのか。
十倉会長「国際博覧会協会そのものがアンバサダーとして起用しているのではありません。大阪府とか周辺の自治体がPRに使っていると聞いています。これも被害者救済と合わせて、タレントさんをどう救っていくかも時間をかけて考えていかなければいけないと考えます」