タイヤ大手、ブリヂストンの株価が2023年9月15日、東京株式市場で一時、前日終値比125円(2.1%)高の6074円まで上昇し、2か月ぶりに上場来高値を更新した。
足元の業績は販売数量減という不安要素を抱えているが、EV向け高性能タイヤ普及への期待などから、ここへきて内外の証券会社の評価が高まり、見直し買いの対象となっている。
23年1~6月期は増収増益...主力の市販(買い替え)用タイヤの不振も、値上げや円安効果がカバー
それでは直近の業績から確認しておこう。
8月9日に公表した2023年1~6月期連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益が前年同期比11.4%増の2兆1017億円、減損損失などを除いた調整後営業利益は15.3%増の2383億円、継続事業ベースの最終利益は55.9%増の1832億円だった。
通期の業績予想は従来のまま据え置いた。
2桁の増収増益であり、一見すると順調に推移しているようだが、販売数量が減っている市販用(買い換え用)タイヤの不振を値上げや円安効果がカバーしているのが実態だ。
タイヤは新車用と市販用があり、市場としては一般的に市販用が新車用より5割程度多く、ブリヂストンにとっても主力商品と言える。また、ブリヂストンは仏ミシュランと並ぶ世界的メーカーでもあり、海外売上高比率は8割に近い。
ブリヂストンが開示した2023年1~6月期の世界の販売状況をみると、この1~6月期に乗用車向けの市販用は欧州で前年同期比21%減、北米と日本でそれぞれ8%減、トラック・バス向け市販用は欧州で42%減、北米で18%減と不調とも言える水準だ。
中国経済の足踏みが欧州景気を減速させているとされるが、タイヤ販売にも影響が出ているようだ。
実際、決算発表直後は2023年後半に販売数量を持ち直せないのではないか、との見方から株価は下値を追うような展開となった。
証券各社、「高性能タイヤ販売は堅調」目標株価引き上げ JPモルガン、投資判断を最上位「買い」に格上げ
ところが、8月下旬から9月半ばにかけて内外の証券会社が目標株価の引き上げを発表した。野村証券は6200円から6400円に、SMBC日興証券は6000円から6400円に、大和証券は5700円から5900円に、シティグループ証券は5600円から5700円という具合だ。
「価格維持力が相対的にあるほか、高性能タイヤの堅調な販売も見込める」(野村)、「特殊車両向けの販売が順調」(SMBC日興)などの見方が出ていた。
なかでもJPモルガン証券は、EVの普及で高性能タイヤの需要が高まる、との見立てから投資判断を3段階で真ん中の「中立」から最上位の「買い」に格上げし、目標株価は6000円から6600円に引き上げた。
相次ぐ証券各社の高評価を受けて株価は上値を追う展開になり、ついに上場来高値を更新するまでになった。
販売数量減という不安材料はあるものの当面は株価が堅調に推移する可能性がありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)