今や日本人の国民食として人気が高いラーメンが大ピンチだ。町のラーメン店の倒産が急増しているからだ。
東京商工リサーチが2023年9月12日に発表した「2023年1~8月『ラーメン店の倒産動向』調査」によると、食材価格や光熱費の高騰によりラーメン店の倒産が前年同期に比べ3.5倍に増えている。ラーメンを愛好するネット民の間から、嘆きの声と応援エールが上がっている。
食材高騰に人件費上昇、体力乏しい「町のラーメン屋」息切れ
東京商工リサーチの調査によると、ラーメン屋さんの倒産は、街から人の姿が消えたコロナ禍の真っ最中、緊急事態宣言に伴う休業や時短営業などにより、2020年1~8月は過去最多の31件発生した。ただし、年後半に入るとコロナ関連支援が広がり、2020年年間(1~12月)では、倒産は38件にとどまった【図表1】。
その後、コロナ関連支援が続いたため倒産が抑えられ、2022年年間の倒産は最少の21件に減少した。ところが、2023年に入るとコロナ関連支援の縮小・終了に加え、食材価格や光熱費の高騰、人件費の上昇が深刻さを増し、それまでとは様相が一変。ラーメン屋さんの倒産が急増に転じている【再び図表1】。
資本金別でみると、「1000万円未満」が26件と9割以上(92.8%)を占め、従業員別でみても「5人未満」が25件と約9割(89.2%)にのぼり、体力に乏しい小・零細規模のラーメン屋さんの息切れが目立つ【図表2】。
都道府県別では、広島県が最多の4件、次いで大阪府と福岡県の各3件、東京都と京都府、島根県、山口県の各2件の順。「博多ラーメン」の本場、福岡県でもラーメン屋さんの倒産が増え、西日本を中心に倒産が広がっている。
ラーメン屋さんは、大規模な調理設備を必要とせず、オーダーから提供まで短時間での対応が可能だ。また、お客さんの滞在時間が短く、高い客回転率により小規模店舗の限られた客席数でも対応しやすく、開業資金も少なくて済む。加えて、若者を中心に幅広い年齢層でファンが多いため、新規参入が多く、もともと競合が激しい業界だ。
こうしたなかで、インバウンド需要への対応や有力チェーン店など、ブランド力の付加価値で高価格帯でも勝負できるラーメン店がある一方、競争力が乏しく、十分な価格転嫁ができない店舗も少なくない。二極化が加速している。
さらに、昨今は、ロシアのウクライナ侵攻による小麦価格の上昇に加え、原油価格やさまざまな食材、電気・ガスなどの光熱費も上昇。また、人手不足に伴う人件費高騰など、急激なコストアップに見舞われ、体力がぜい弱な街のラーメン屋さんの経営は厳しさがどんどん増している。