東京商工リサーチ(東京都千代田区)が2023年9月6日に発表した「2023年(1-8月)『飲食業の倒産動向』調査」によると、2023年(1-8月)の飲食業倒産は、前年同期比82.3%増で569件に上ることがわかった。
これは2022年1-12月までの522件を1-8月の段階で上回る数字だ。同社は「2020年の年間倒産(842件)を抜いて、過去最多の850件台に乗せる可能性も出てきた」と指摘する。
背景には、コロナ禍におこなわれた支援策が相次いで終了・縮小したほか、人手不足に伴う人件費高騰や、食材・光熱費の上昇などコスト負担が上昇しているのに、客足が戻らないなかで、価格転嫁・値上げが容易でない状況が続いていることがあげられる。
業種別では「宅配飲食サービス業」192.8%増、「持ち帰り飲食サービス業」145.4%増
飲食業倒産月次推移によると、2023年(1-8月)の「飲食業」倒産は569件(前年同期比82.3%)で、2022年の年間件数である522件をすでに上回っているという。
また、8月までの倒産の月平均である71.1件で推移すると、新型コロナウイルス感染症蔓延期の2020年の年間倒産数の842件を抜いて、過去最高の年間850件台に乗る可能性もある、と東京商工リサーチは指摘する。
調査元では「コロナ関連支援の終了・縮小の一方で、人手不足や食材費・電気代は高騰し、コロナ禍より厳しい事業環境に直面する飲食業者は多く、今後も飲食業倒産は増勢を強めるとみられる」と分析している。
飲食業業種小分類別倒産状況のグラフによると、業種別では、「宅配飲食サービス業」が前年同期比192.8%増の14件→41件。「持ち帰り飲食サービス業」が同145.4%増の11件→27件という増加が目立つ。
このほか、「専門料理店」同103.1%増の64件から130件。「食堂、レストラン」同100.0%増の70件から140件と続く。これら4業種と「喫茶店」は、2023年1-8月時点で、2022年の年間倒産件数をすでに上回っている状況だ。
原因別では「販売不振」、「既住のしわ寄せ」、「他社倒産の余波」
つぎに、飲食業原因別倒産状況のグラフを見ると、最多は「販売不振」が最多の468件で前年同期比85.7%増となった。次いで、経営状態が悪化でありながら、具体的な対策を講じないまま資産を使い果たす「既住のしわ寄せ」が36件で同80.0%増、「他社倒産の余波」が28件で同115.3%増となった。
東京商工リサーチでは、「『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は504件(同85.2%増)で、構成比は88.5%(前年同期87.1%)を占めた。増加率では、「事業上の失敗」が前年同期比142.8%増(7→17件)で最大だった」としている。
都道府県別では、倒産数が増加したのは36都道府県で、減少した県は8県、前年度と同数だったのは3県だった。
大都市圏の倒産件数の多さが目立つ。東京都は53件から88件の66.0%の増加。大阪府は37件から66件の78.3%の増加。愛知県は16件から48件の200.0%の増加となった。なお、最大の増加となったのは群馬県の2件から10件の400.0%増となっている。
東京商工リサーチでは、以下のようにコメントしている。
「コロナ禍の制限緩和が進む一方で、8月に東京商工リサーチが実施したアンケート調査では、売上がコロナ以前の水準に戻らない飲食業者は7割(72.4%)に達する。
人手不足に伴う人件費高騰や食材・光熱費の上昇などコスト負担は上昇しているが、4月調査では飲食業の71.4%が『まったく価格転嫁できていない』と回答した。
客足が戻らないなかで、価格転嫁・値上げが容易でない状況が続いている。このため、2023年の飲食業倒産は年間の過去最多を更新する可能性が高まっている」
なお、この調査は日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場、ビヤホール」「バー、キャバレー、ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2023年(1-8月)の倒産を集計、分析したもの。