ジャニーズタレント起用の上場企業、3割が「見送りドミノ」 でも、世界的外資系企業は起用続ける また、タレントに感謝の惜別の辞も

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   故・ジャニー喜多川氏の性加害問題を受け、所属タレントのCM起用をめぐり、ジャニーズ事務所に激しい逆風が吹き荒れている。

   帝国データバンクが2023年9月14日に発表した「緊急調査:『ジャニーズタレント』CM等起用の上場企業動向調査(2023年9月13日時点)と、その後の情勢変化を踏まえると、起用している上場企業の3分の1以上が「起用を見送る」方針であることがわかった。

   ネット民の間では、「事務所が解体的出直しをしない以上、当然だ」という意見が圧倒的だが、その一方で起用を続けている外資系企業は、安易に世論に流されない姿勢が肯定的に受け止められている。

  • ジャニーズ事務所(東京都港区)
    ジャニーズ事務所(東京都港区)
  • ジャニーズ事務所(東京都港区)

起用見送り企業でも、「完全決別」というわけでは...

   帝国データバンクの調査は、同社が保有する企業データベースと外部情報から、ジャニーズタレントを2023年以降にテレビCMや企業広告などに起用(予定を含む)したことが判明した上場企業65社を対象にしている。

   そして、9月13日時点までに各社の発表や報道資料をもとにタレントの起用動向を調査。それによると、「即時中止」(10社)と「契約を更新しない」(10社)の合計16社(24.6%)が「今後起用しない」とした。残り49社(75.4%)は「検討中・続投」ということになる【図表1】。

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(図表1)上場企業「ジャニーズタレント」起用動向(9月13日時点)(帝国データバンク調べ)

   65社を業種別にみると、「食料品」(14社)が最も多く、「化粧品・日用品」(12社)、「不動産」(6社)と続く【図表2】。

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(図表2)起用した65社の業種別内訳(帝国データバンク調べ)

   帝国データバンクでは、

「人権意識の高い欧米市場などでは児童性加害問題で特に厳しい対応を迫られる。グローバル企業や機関投資家が多い金融機関などでは、取引停止リスク回避も目的に、ジャニーズタレントの起用見送りといった厳しい対応が続くとみられる」

   としながらも、

「起用を見送る企業でも、今後の被害補償対応次第など条件付きのケースが多く、完全解消には慎重な動きもある。知名度が高いジャニーズタレントの起用見直しについて、各企業における今後の判断が注目される」

   と、分析している。

   いったん見送った企業でも、完全にジャニーズ事務所と決別したわけではないということだ。

アサヒ、サントリー、カゴメ、日産、佐川急便、森永、明治...

   報道をまとめると、その後、9月15日時点までにジャニーズタレントのCM起用の今後取りやめると発表した企業が増え、少なくても22社(33.8%)に達した。次のとおりだ(カッコ内は起用しているタレント名)。

   東京海上日動火災保険(相葉雅紀さん)、アサヒホールディングス(岡田准一さんら)、サントリーホールディングス(松村北斗さん)、キリンホールディングス(目黒蓮さんら)、日本マクドナルド(木村拓哉さん)、花王(中島健人さんら)、第一三共ヘルスケア(松本潤さん)、伊藤ハム(二宮和也さん)。

   日産自動車(木村拓哉さん)、日本航空(現在起用なし)、日本生命保険(現在起用なし)、モスフードサービス(渡辺翔太さんら)、サッポロビールホールディングス(松岡昌宏さん)、アフラック生命保険(櫻井翔さん)、あいおいニッセイ同和損害保険(岡田准一さんら)。

   ジェーシービー(二宮和也さん)、カゴメ(Travis Japan)、佐川急便(松本潤さん)、バスクリン(高地優吾さん)、森永乳業(井ノ原快彦さん)、東急不動産ホールディングス(岡田准一さんら)、明治(相葉雅紀さん)などだ。

いったん継続と発表しながら、中止に豹変する企業に失望

性加害謝罪会見に出席した藤島ジュリー景子(現ジャニーズ事務所代表取締役、2023年9月7日撮影)
性加害謝罪会見に出席した藤島ジュリー景子氏(現ジャニーズ事務所代表取締役、2023年9月7日撮影)

   こうした動きについて、ヤフーニュースコメント欄ではさまざまな意見が出ている。企業は、ジャニーズと決別するべきだという意見が非常に多かった。

「検討中としている企業も、日本国内のみならず今のこの世界情勢の中で、続投を貫くことはあり得ないと思います。自分の首を絞めるような企業があるとは思えないです。ジャニーズに解体的な出直しが期待できない以上は、企業のほうから離れていかざるを得ない。今回の件は、最後までジャニーズの看板を下ろさなかったことが致命的であったと思います」
「曲がりなりにも社長は変わったので、そこの部分は取り敢えず良い。問題は社名を変えなかったこと、ジュリー氏の株を取り上げて引退させなかったことの2点。会社が新しく生まれ変わったことを、世間やスポンサーに強くイメージさせるためには、社長交代、社名変更、ジャニー一族の完全排除は絶対条件。タレントのギャラ云々なんて正直どうでもよく、この3点を実行しなければ、ジャニーズ事務所に未来はありません。そこが、東山氏は分かっていない」

   起用を巡って、いったん継続と発表しながら中止に追い込まれる、右顧左眄(うこさべん)の企業が何社か出たが、厳しい見方がされている。

「一時継続を表明して中止に転換した企業は、継続発表の時点で叩かれ、中止に手のひら返しをしてもネガティブな意見が絶えません。しかし、未だに検討中とも公表せず、黙秘を貫く企業はそもそも名前が出てこないので叩かれることもない。立ち回りとしてはある意味、正解でしょう。
広告にジャニーズを起用するということは、ジャニーズファンが主要な顧客層である可能性が高い。大騒ぎされている最中に、他所に合わせただけの中止発表は、世論では高評価を得ても、自らの顧客からの評価はよいとは限りません。8割の企業は、できれば自然鎮火を目論みつつ、もし陰に潜んでいることまで名指しで批判されるようになったら、途端に中止発表が相次ぐでしょうね」

タレントへの感謝の念、そして外資が起用を続ける理由は?

   一方で、CM起用の取りやめを発表するにしても、これまで長年起用してきたジャニーズタレントへのリスペクトがあるべきだという意見も目立った。

「ここまでの状況になっても、ジャニーズ事務所への忖度(そんたく)や、銭勘定している企業もあると思うが、何より、起用していたタレントへの感謝や愛情もあるのだろうね。共に歩んだ年月があって、そのタレントと共に成長してきたという思いもあるだろうね」
「私の中では、ジェーシービー(JCB)の対応が1番よかった。相手に感謝もせずに切るって、事情が事情でも失礼で、消費者に対してもそういう姿勢なのだろうなと」

   なお、ジェーシービーは、打ち切りのコメントをメディアに発表する際、その冒頭にこれまでCMに起用してきた二宮和也さんについて、「2010年より13年間、私達と一緒に歩んできた特別な存在です」と述べたのだった。

   また、雪崩を打って「ジャニーズ離れ」を起こす日本企業に対し、ジャニーズタレントの起用を続ける資系企業に驚く意見も目に付いた。世界最大の一般消費財メーカー、P&Gジャパンだ。洗剤のCMに生田斗真さんや菊池風磨さんの起用を続けている。

   同社のヴィリアム・トルスカ社長が9月13日、朝日新聞の取材に応じて、その意図を語った。記事によると、「責任ある広告主でありたい」として、同社には非常に高い倫理基準があり、協力会社にも同様に求めているなかで、「ジャニーズ事務所には、記者会見で発表した以上の詳細な再発防止計画の提出を求めており、その計画を評価し、どう取り組むかを厳しく見ていく」という。その結果が出るまで起用を続ける、と読みとれる。

   こうしたことから、ヤフーニュースコメント欄ではこんな肯定的な声があがっていた。

「P&Gが続投表明したのは意外でした」
「世界の大企業P&Gは、世論に安易に流されない方針で素晴らしい」

(福田和郎)

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