未婚者の結婚の意思は、この40年でどう変化したか? 「一生結婚するつもりない」は増加し、独身生活で「行動や生き方が自由」を重視【人口問題1】(鷲尾香一)

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   少子化は日本の抱える最大の問題と言える。今回は国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」から、未婚者の結婚や出産に対する考え方、既婚者の出会いと結婚、そして、出産や子育てに対する考え方を取り上げていく。

「いずれ結婚するつもり」...独身男性は4.3ポイント減の81.4%、独身女性は5.0ポイント減の84.3%

   国立社会保障・人口問題研究所は2023年8月31日、2021年6月30日現在の「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」の結果を公表した。対象は、全国1000調査区に居住する年齢18歳以上55歳未満の独身者と妻の年齢が55歳未満の夫婦で、独身者は7826人、夫婦は6834組の有効回答を得た。

   今回の第1回は、18~34歳の独身者の異性との関係や結婚に対する考え方を取り上げる。

   まずは、結婚の意思の変化だが、独身者の「いずれ結婚するつもり」との回答が減少し、「一生結婚するつもりはない」の増加が続いている。

   男性では、「いずれ結婚するつもり」は前回調査(2015年、以下同じ)から4.3ポイント減少して81.4%となり、「一生結婚するつもりはない」が同5.3ポイント増加して17.3%となっている。(グラフ1)

   一方、女性は「いずれ結婚するつもり」は前回調査から5.0ポイント減少して84.3%となり、「一生結婚するつもりはない」が同6.6ポイント増加して14.6%となっている。(グラフ2)

   男女ともに、2000年代に入り、「一生結婚するつもりはない」の増加が目立っているが、年齢を追うごとに「いずれ結婚するつもり」が減少し、「一生結婚するつもりはない」が増加している。

   18~19歳、20~24歳、25~29歳では、男女とも「いずれ結婚するつもり」は80%を上回っているが、「一生結婚するつもりはない」は男性の18~19歳では13.6%から25~29歳では16.1%に増加、女性も18~19歳の11.2%から25~29歳では14.1%に増加する。

   顕著に表れているのが、いずれの年齢で男女とも、それまでの傾向よりも前回調査からの「いずれ結婚するつもり」の減少幅、「一生結婚するつもりはない」の増加幅が拡大していることだ。これは、新型コロナが結婚観に影響を与えた可能性がありそうだ。

   衝撃的なのは、30~34歳で「いずれ結婚するつもり」は男性が70.8%、女性が77.4%に低下、「一生結婚するつもりはない」が男性は27.2%、女性が20.4%に増加する。男性は4人に1人、女性は5人に1人が結婚の意思がないということになる。

   30~34歳では前回調査から「いずれ結婚するつもり」は男性で12.5ポイント、女性で6.7ポイント減少し、「一生結婚するつもりはない」が男性で12.8ポイント、女性で7.3ポイント増加、他の年齢に比べて圧倒的に変化幅が大きい。

結婚して「子どもや家族をもてる」が減少に転じる...男性は4.7ポイント減の31.1%、女性は10.4ポイントの39.4%

   結婚の意思だけではなく、結婚に対する考え方、結婚観にも変化が表れている。

   結婚することの具体的な利点では、1987年調査からほぼ一貫して増えていた「自分の子どもや家族をもてる」が減少に転じた。

   男性は前回調査から4.7ポイント減少して31.1%に、女性は同10.4ポイント減少して39.4%となり、女性が考える結婚の利点として、家族を持つことが大きく減少している。

   一方で、独身生活の具体的な利点としては、「行動や生き方が自由」が増加を続けている。

   男性は前回調査から0.9ポイント増加して70.6%に、女性は3.2ポイント増加して78.7%となった。

   女性の方が男性よりも、結婚して家族を持つことよりも、独身でいることで行動や生き方が自由であることを重視している傾向が強まっている。

18~34歳未婚者「交際相手持たない」...男性は40年前36.8%→直近72.2% 女性は40年前30.1%→直近64.2%

   では、現在の18~34歳の未婚者の異性との交際状況は、どのようになっているのか。

   「恋人または婚約者がいる未婚者」の割合は、2000年代前半をピークに、男女とも低下している。男性は2005年の27.1%をピークに2021年には21.1%に、女性は2002年の37.1%をピークに2021年には27.8%に低下した。(グラフ3)

   その背景には、男女ともに異性の交際相手に対する考え方の変化がある。

   交際相手を持たない割合は、男女ともに年々増加している。男性は約40年前の1982年には36.8%だったが、約20年前の2002年には52.8%と半数を超え、2021年には72.2%にまで増加している。女性も1982年には30.1%だったが、前回調査の2015年には59.1%と半数を超え、2021年には64.2%となった。

   特に変化が大きいのは、異性の交際相手について、男性では「交際を望む」が31.1%に対して、「交際を望まない」が36.1%に、女性では「交際を望む」が24.5%に対して、「交際を望まない」が39.4%にのぼっていることだ。

   男女ともに、異性の交際相手を「望まない」が、「望む」を大きく上回っている。

   前回調査から「交際を望まない」の割合は、男性で3.4ポイント、女性では4.5ポイントも増加している。すなわち、女性では5人に2人は異性との交際を望んでいないという結果となっている。(グラフ4)

   未婚者の異性との交際の経験でも、男性の37.7%、女性の32.7%が「これまでに異性と交際した経験がない」と回答している。

18~34歳未婚者の性交経験、年々減少...直近は男性53.0%、女性47.5%

   こうした異性に対する交際経験や異性の交際相手を望む気持ちは、未婚者の性交経験にも表れている。

   18~34歳の未婚者の「性交経験あり」の割合は年々減少している。2021年は男性が53.0%、女性が47.5%といずれも未婚者の半数程度となっている。

   年齢別に見ると、男性では25~34歳の割合が減少を続けている。25~29歳で63.6%、30~34歳で62.8%となっている。女性では、18~34歳のすべての年齢で減少しており、18~19歳で19.9%、20~24歳で45.4%、25~29歳で61.2%、30~34歳で55.6%となっている。(グラフ5)

   異性との交際を望まない独身者の割合の拡大や、性交経験の低下、あるいは一生結婚をしないとの考え方の増加が、少子化の根源的な原因になっている可能性もありそうだ。

   次回は、独身者が結婚を踏まえた生活のあり方をどのように考えているのかに焦点を当ててみたい。【第2回につづく】

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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