大手企業に加速する「ジャニーズ離れ」...エンタメ業界に君臨「ジャニーズ帝国」の意外な弱点 調査で判明、取引先226社のうち上場企業1割だけ

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   故・ジャニー喜多川氏の性加害問題を受け、ジャニーズタレントを起用してきたスポンサー企業が雪崩を打って契約終了を発表するなど、ジャニーズ事務所に逆風が吹き荒れている。

   そんななか、東京商工リサーチは2023年9月13日、「ジャニーズグループ取引先調査」を発表した。

   「ジャニーズ帝国」として日本のエンターテインメント業界に君臨してきたジャニーズ事務所の意外な素顔を浮かび上がる。

  • ジャニーズ事務所(東京都港区)
    ジャニーズ事務所(東京都港区)
  • ジャニーズ事務所(東京都港区)

「ジャニーズ帝国」支える、グループ13社のピラミッド構造

   報道をまとめると、9月14日までに、ジャニーズ事務所のタレントのCM起用の取りやめ方針を発表した主な企業が次のとおりだ(カッコ内は、現在CMに起用しているタレント名)。

東京海上日動火災保険(相葉雅紀さん)、アサヒグループホールディングス(岡田准一さんら)、サントリーホールディングス(松村北斗さん)、キリンホールディングス(目黒蓮さんら)、日本マクドナルド(木村拓哉さん)、花王(中島健人さんら)、第一三共ヘルスケア(松本潤さん)、伊藤ハム(二宮和也さん)、日産自動車(木村拓哉さん)、日本航空(現在起用なし)、日本生命保険(現在起用なし)、モスフードサービス(渡辺翔太さんら)、サッポロビールホールディングス(松岡昌宏さん)...

   東京商工リサーチの調査は、ジャニーズ事務所と、同社ホームページに掲載されているグループ企業13社が対象だ。その13社のピラミッド型に分割・構築された業務内容を見ると、「ジャニーズ帝国」のパワーの全貌が垣間見える。

   13社を調べてみたところ、以下の会社となる。ジャーズタレントの公演を行なう「東京・新・グローブ座」、ジャニーズJr.のプロデュースを行なう「ジャニーズアイランド」、TOKIOメンバーが運営する「株式会社TOKIO」、貸しスタジオの「つづきスタジオ」、動画を中心としたコンテンツの運用・管理を行なう「エム・シィオー」。

   コンサートの企画から運営を行なう「ヤング・コミュニケーション」、ジャニーズタレントの広告キャスティングを手がける「ユニゾン」、レコード・映画制作の「ジェイ・ストーム」、オフィシャルグッズ販売の「ジェイステーション」、さらにオフィシャルショップを展開する「ジェイベース」。

   また、音楽著作権の管理とコンサートパンフレットの出版を行う「ジャニーズ出版」、音楽や映像ソフトの企画・制作・発売を行なう「ジャニーズ・ミュージックカンパニー」、さらにジャニーズ事務所とエイベックス・エンタテインメントが合同で設立したレコード会社「MENT RECORDING」といった案配なのだ。

直接取引する相手は小規模、代理店を通じて上場企業と取引

   東京商工リサーチの調査は、ジャニーズグループの仕入先、販売先を1次(直接取引)、2次(間接取引)に分けて分析した。1次・2次合わせて全国に226社あった。

   このうち、東証プライムが21社(9.2%)、同スタンダード7社(3.1%)、同グロース2社(0.8%)で、上場企業は1割超の計30社(同13.2%)あった。ただし、1次取引先では上場企業は1社しかなく、2次に広げると、間接的に代理店などを経由した取引の上場企業が大幅に増えるのが特徴だ【図表1】。

(図表1)取引先の上場・未上場別(東京商工リサーチ調べ)
(図表1)取引先の上場・未上場別(東京商工リサーチ調べ)

   これは、たとえばCMや音楽ソフトなどの制作は、1次取引の小さな制作会社に発注するが、それを実際に使う2次取引はテレビ局や大手企業などになるからだろう。

   この傾向は、【図表2】のように、取引先を売上高別にみたデータでも同じだ。内訳は、最多が10億円以上100億円未満で59社(26.1%)、次いで100億円以上1000億円未満の45社(19.9%)、1億円以上10億円未満の43社(同19.0%)と続く。1000億円以上も35件(同15.4%)あった。

(図表2)取引先の売上高別(東京商工リサーチ調べ)
(図表2)取引先の売上高別(東京商工リサーチ調べ)

   しかし、仕入先をみても1次は比較的規模の小さな企業が多く、2次は売上高の大きな企業が大幅に増えることがわかる。たとえば、仕入先で1000億円以上の企業は1次ではゼロだが、2次では13社もある。このことは販売先をみても同様だ。1000億円以上の企業は1次では2社だけだが、2次では23社に増えている【再び図表2】。

   産業別の取引先をみると、最多はサービス業他が89社(39.3%)で、次に情報通信業の49社(同21.6%)と続き、この2つで全体の6割(60.9%)に達する【図表3】。細分化した業種別では、大手広告代理店など広告業が29社(同12.8%)で最も多く、テレビ番組制作業の12社(同5.3%)のほか、CM契約を結ぶ持株会社との取引も多かった。

(図表3)取引先の産業別(東京商工リサーチ調べ)
(図表3)取引先の産業別(東京商工リサーチ調べ)

「企業は社会の公器」の基本がお粗末だったジャニーズ事務所

性加害謝罪会見に出席した藤島ジュリー景子氏(現ジャニーズ事務所代表取締役、2023年9月7日撮影)
性加害謝罪会見に出席した藤島ジュリー景子氏(現ジャニーズ事務所代表取締役、2023年9月7日撮影)

   約1割超しかない上場企業の取引先のほとんどが2次取引、つまり間接取引だった。しかも、いまどんどん離れているわけだ。こうしたことから、東京商工リサーチではこうコメントしている。

「8月に公表された外部専門家による再発防止特別チームの調査報告書で、ジャニー喜多川氏の性加害の事実や適切な調査などの対応をしていなかったことが認められた。問題の背景は、同族経営の弊害のほか、ガバナンスの脆弱性が挙げられた。
国際的にコンプライアンス(法令遵守)違反への対応は厳格で、取引の縮小や打ち切りも少なくない。所属タレントの広告起用を見直す動きは、取引の継続が少年への性加害を追認しているとみられかねず、自社のイメージダウンやガバナンス不全と捉えられるからだ。
ジャニーズグループは、日本を代表するエンターテインメント企業の1つで、幅広い分野の企業と取引している。だが、未上場で外部のチェックが効きにくく、これまで決算の官報公告もほぼ行っておらず、財務状況などの情報開示にも消極的だ。
企業は社会の公器だが、その分野で絶対的な存在になると、経営者の考え方次第でステークホルダーとの関係がいびつになりかねない。ジャニーズグループは大株主(資本)と経営者(経営)が一体で、株主や取引先の意向に左右されることはなかった。それだけに今後、どこまでコンプライアンスを徹底できるか注目される」

   調査は、東京商工リサーチのデータベースの企業相関図から、ジャニーズグループの取引先(仕入先、販売先)226社を1次(直接取引)、2次(間接取引)に分けて抽出して分析した。(福田和郎)

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