「企業は社会の公器」の基本がお粗末だったジャニーズ事務所
約1割超しかない上場企業の取引先のほとんどが2次取引、つまり間接取引だった。しかも、いまどんどん離れているわけだ。こうしたことから、東京商工リサーチではこうコメントしている。
「8月に公表された外部専門家による再発防止特別チームの調査報告書で、ジャニー喜多川氏の性加害の事実や適切な調査などの対応をしていなかったことが認められた。問題の背景は、同族経営の弊害のほか、ガバナンスの脆弱性が挙げられた。
国際的にコンプライアンス(法令遵守)違反への対応は厳格で、取引の縮小や打ち切りも少なくない。所属タレントの広告起用を見直す動きは、取引の継続が少年への性加害を追認しているとみられかねず、自社のイメージダウンやガバナンス不全と捉えられるからだ。
ジャニーズグループは、日本を代表するエンターテインメント企業の1つで、幅広い分野の企業と取引している。だが、未上場で外部のチェックが効きにくく、これまで決算の官報公告もほぼ行っておらず、財務状況などの情報開示にも消極的だ。
企業は社会の公器だが、その分野で絶対的な存在になると、経営者の考え方次第でステークホルダーとの関係がいびつになりかねない。ジャニーズグループは大株主(資本)と経営者(経営)が一体で、株主や取引先の意向に左右されることはなかった。それだけに今後、どこまでコンプライアンスを徹底できるか注目される」
調査は、東京商工リサーチのデータベースの企業相関図から、ジャニーズグループの取引先(仕入先、販売先)226社を1次(直接取引)、2次(間接取引)に分けて抽出して分析した。(福田和郎)