「単なる次世代の食材」では、仮に1回手に取られても「続かない」
――エコロギーパウダーの実際の使用例をお教えください。
葦苅氏 エコロギーパウダーは舌触りがよく、甘いものから塩辛いものまで相性がいいのが特徴です。このため、その使用例としてはまずチョコレートが挙げられます。混ぜるだけで、コクを出すことができます。また、塩辛いものとしては、パンやスナック菓子が挙げられます。
――汎用性が高いのですね。
葦苅氏 ただ、いくつか問題があります。それは、チョコレートに混ぜる場合がまさしくそうなのですが、混ぜる対象が嗜好品の場合は、それを食べた場合のコオロギパウダーの摂取量はいかに栄養価が高くても極わずかです。
なので、我々がまずやっていきたいことは、コオロギ食を嗜好品などで気軽に楽しんでいただいて、その次の段階として「栄養価が高い食材」として認識していただくことです。ひいては、「毎日継続的に食べる健康食材」としての普及を目指しています。
――継続的に摂取する食材にするためのアプローチとしてはどんなことをなさっているのでしょうか。
葦苅氏 具体的には健康補助食品「グリロプロテイン」の販売を行っています。ようは、「単なる次世代の食材」で終わらないようにしていきたい、ということです。
近年、日本国内でもSDGsへの関心は高まっているため、若い方を中心にコオロギ食を手に取る方は増えていますが、単なる次世代の食材では仮に1回手に取っていただいても「続かない」のです。
――たしかに、「環境にいいから」と言われて、即、「コオロギを食べよう!」とは、なりませんよね......。
葦苅氏 なので、「いかに継続的にコオロギで栄養素を採っていただくか」という話になっていくわけです。正直な話、コオロギ食に対する世間の認知度はまだまだ表面的な新しさがウケているという状況から脱していない、と感じています。そうではなくて、「鉄分や亜鉛など、普段の食事では不足しがちな栄養素を手軽に摂取できる生活習慣」としてのコオロギ食を提案していきたいのです。
――鉄分や亜鉛、不足しがちですよね。
葦苅氏 そういったことを通じて、コオロギ食のイメージを、いわゆる「ゲテモノ食品」から変えていきたい、と考えています。
業界全体としての課題としていえると思いますが、現状、たとえばコオロギ食の製品にはコオロギのイラストがプリントされていたりもします。それを面白がって手に取る方は多いのですが、それでは「1回食べて終わり」になってしまいます。しかも、そうしたパッケージからは、鉄や亜鉛が多いという、栄養に関しての事実は伝わっていません。
そうではなくて、鉄分が多く含まれている以上、たとえば、貧血の予防になるといった説明が必要なのです。そういうこともあって、弊社は女性向けの商品として貧血などの健康課題を解決するための栄養補助食品の商品開発を進めています。