大手企業で加速するジャニーズのタレント起用「見送りドミノ」 経済同友会・新浪代表「タレント起用は性加害認め、国際的非難」...ネット大激論

   ジャニーズ事務所の性加害問題を受け、所属タレントのCM起用をめぐり、大手企業の「見送りドミノ」が加速している。

   そんななか、経済同友会の新浪剛史代表幹事が2023年9月12日、記者会見で「ジャニーズのタレントを起用することは、子ども虐待を認めるということで、国際的に非常に非難を浴びるもとになる」と痛烈に批判した。

   財界トップの重い発言だけに、今後、大手企業のジャニーズ離れがさらに進みそうだ。ネット民の間では「当然の発言が、やっと経済から出た」と称賛の声と、「企業のご都合主義」という批判と賛否大激論だ。

  • ジャニーズ事務所(東京都赤坂)
    ジャニーズ事務所(東京都赤坂)
  • ジャニーズ事務所(東京都赤坂)

東京海上、アサヒ、キリン、マック、花王、日航、日産...続々と見送り

   ジャニーズ事務所の外部専門家による「再発防止特別チーム」が8月30日、記者会見を行ない、故・ジャニー喜多川氏による「数百人に及ぶ性加害」を認定、藤島ジュリー景子社長(当時)に辞任を提言する報告書を発表しても、大手企業の動きは鈍かった。

   風向きが一変したのは9月7日、同事務所が記者会見し、性加害を初めて認めて謝罪してからだ。報道によると、東京海上日動火災保険は同日、事務所との契約解除を検討していることを明らかにした。翌8日にはアサヒグループホールディングス、さらにキリンホールディングス、サントリーホールディングスと続き、「ジャニーズ離れ」の雪崩現象が起こった。

   報道をまとめると、9月13日までに、ジャニーズ事務所のタレントのCM起用の取りやめ方針を発表した主な企業が次のとおりだ(カッコ内は、現在CMに起用しているタレント名)。

東京海上日動火災保険=契約は更新せず、満了前の解除も検討(相葉雅紀さん)
アサヒグループホールディングス=広告は順次打ち切り、契約は更新しない(岡田准一さんら)
サントリーホールディングス=再発防止などの納得ある説明があるまで契約しない(松村北斗さん)
キリンホールディングス=企業統治を発揮するまで契約しない(目黒蓮さんら)
日本マクドナルド=現行契約の満了後は更新しない(木村拓哉さん)
花王=可及的速やかに広告や販促を中止(中島健人さんら)
第一三共ヘルスケア=契約更新を行わない(松本潤さん)
伊藤ハム=契約更新を見送る(二宮和也さん)
日産自動車=広告で新たに起用しない(木村拓哉さん)
日本航空=適切な対応が取られるまで起用を見送り(現在起用なし)
日本生命保険=今後の広告に起用しない(現在起用なし)

新浪氏「謝罪はあったが、真摯に反省しているか大変疑わしい」

新浪剛史・経済同友会代表幹事(Youtube経済同友会チャンネルより)
新浪剛史・経済同友会代表幹事(Youtube経済同友会チャンネルより)

   こうしたなか、9月12日、経済同友会の新浪剛史代表幹事の定例記者会見が開かれた。報道によると、ジャニーズ問題について新浪氏はこう語った。

   「被害者の心の傷は想像以上で、絶対にあってはならないことだ。ジャニーズ事務所のタレントを起用することは、チャイルドアビューズ(child abuse、子ども虐待)を企業が認めるということであり、国際的には非常に非難のもとになります」

   さらに、ジャニーズ事務所の今回の対応について、「謝罪はあったが、現体制が、性加害があったことに対して、真摯に反省しているのかは大変疑わしい。ジャニーズ事務所の今回の調査の内容、対応は不十分だ」と強く批判したうえで、「被害者の救済やガバナンス体制の強化をどうするか、もっと明確に打ち出すべきだ」と指摘した。

   そして、記者団から「企業の間では、ジャニーズ事務所に所属するタレントと新たに契約をしないなど、関係を見直す動きが広がっているが」と聞かれると、こう答えた。

   「(自身が社長を務める)サントリーホールディングスでは、被害者の救済策や再発防止策が十分であるとの納得いく説明があるまでは、ジャニーズ事務所と新たな契約を結ばない。企業としては断固としてきぜんたる態度を示さないといけない事象だ。事務所のタレントを起用することは性加害を企業が認めることで、国際的には非難の的になる」

   最後に、「所属タレントには罪がない」という意見があることについては、「事務所で働くタレントの方々には大変心苦しいことはあるが、ほかの事務所に移るなどいろんな手があるのではないか」と述べたのだった。

「財界トップからやっとまともな意見が出て、よかった」

ジャニーズ事務所の記者会見に出席した藤島ジュリー景子氏(2023年9月7日撮影)
ジャニーズ事務所の記者会見に出席した藤島ジュリー景子氏(2023年9月7日撮影)

   新浪氏の発言には、ネット民から肯定的な意見が相次いでいる。ヤフーニュースコメントではこんな意見が上がった。

「『人権を損なってまで必要な売り上げは、1円たりともありません』(編集部注:朝日新聞9月12日付インタビュー)のアサヒグループホールディングスの勝木敦志社長といい、やっと経営者のまともな意見が出てきてよかった。テレビ局もまだまだ及び腰で、出来れば事を荒立てずスルーしようとしているから、スポンサーである巨大企業からこうやってプレッシャーを与えるのが一番効果あるだろう。それには大勢の消費者の声も必要だから、米粒にも満たないような小さい声でもSNSで発信していきたい」
「『ジャニーズ事務所を使うということは、チャイルドアビューズを認めることになる』。経済同友会のトップである新浪氏のこのコメントは、非常に重大です。つまり、『タレントたちには罪はないから』と言い逃れ、今まで同様ジャニーズタレントを使い続けようとしていたテレビ局各社に、Noを突きつけたのですから。今後、経済同友会に所属する各社のジャニーズタレントのCMの中止、ジャニーズタレントを起用する番組からのスポンサー撤退などの動きが加速することが予想されます。TV局は早急な対応が求められるでしょう」
「株式を公開している会社にとって、広告宣伝という極めて大事な部分に経済同友会トップが激しい非難を行った。CMでの起用は、コンプライアンス重視の海外投資家から忌避される理由になる。この流れで、銀行金融機関までが取引をためらい始めたら、ジャニーズ事務所は企業としては『動脈』を遮断されるのだから、完全に終わりだ。ジャニーズ推しの皆さん、冷静に事態を把握してください。もうファンの『推し』が通用するような事態ではありませんよ」

   ジャニーズに対する企業の対応を冷静に見よう、と呼びかける意見も多かった。

「今回、消費者というか、株主が見なければならないのは、大きくパラダイムシフトする際、危機管理が必要な際の会社の対応である。信念を全面に打ち出して対応を始める企業、世間の様子を見てから対応を決める企業、考えがぶれる企業、いろいろ出てきている。どの会社が信頼できる会社か、社会情勢の変化にいち早く対応できるのか、今回は試金石にも見える」
「口々に契約満了をもって更新しないという。なぜ、即時契約打切りとはしないのか?そもそも、そのような会社と契約した自らの企業としての反省を込めて、即日契約打切りならば納得できる。長いものには巻かれろと、追随している企業の本音が見え隠れする。違約金(?)については、恐らくは詳細な決まりがあるはず。今回は企業側が払うことになるとは思えない」

「所属しているタレントがなぜ独立を宣言しないのか、不思議」

ジャニーズ事務所の記者会見に出席した東山紀之氏(2023年9月7日撮影)
ジャニーズ事務所の記者会見に出席した東山紀之氏(2023年9月7日撮影)

   一方、「所属タレントたちに罪はない」という見方に対しては、非常に厳しい見られ方もされている。

「(新浪氏の発言は)もっともな意見です。ジャニー喜多川氏が、いわば自分のハーレムを作るために作った事務所。所属タレントはとばっちりかもしれないけど、自分の意思で『ジャニーズを辞めない』というのであれば、同情する必要もないのでは? いくら『ジャニーズとしての誇り?』があるのかもしれないけど、それはもう自分の胸の中に収めておけばいいのでは?」
「これ海外なら、タレントは事務所を移籍します。事務所に残ると、児童への性虐待を認めたと取られかねないからです。事務所に所属しているタレントは、その辺りの認識がどうも乏しいように思います。タレントに罪はないと言ってもらえるのは今だけで、自分の意志で事務所に残ったのであれば、そういう判断がくだされること、それで仕事がなくなったのなら、自業自得であることを理解してほしい」
「欧米のエンターテイナーたちの感覚であれば、事務所に所属しているタレントがなぜ独立を宣言しないのか、不思議に感じていると思う。それほど性加害の事務所がテレビ局に影響を及ぼしていることに、日本の閉鎖性を感じているのではないか。今回のスポンサー離れからさらに一歩踏み出して、勇気を持って独立したタレントをスポンサーが支持する流れが出来ると良いですね」
「所属タレントの方々の多くは被害者の側ですから、いたたまれない状況ですが、このような悪習をなくすためにも、事務所に対する処置と考えれば、企業側の対応は間違っていない。所属タレントの方々は移籍という道もあるわけで、実力やファンの力があれば、他の事務所でもやり直せるはずです。しかし、その移籍を阻むような忖度がさらに発生しないよう注視する必要があると、個人的には感じます」

   また、所属タレントの「甘え」に対しては、こんな指摘も。

「私はバレーボールが好きなのですが、バレーボールW杯のジャニーズの応援は、本当にたまったものじゃなかったです。バレーボールなんか全く知らないド素人、だけならまだしも、あーこの人たち、バレーに一切興味がないのだな、ということがよくよく分かりました。
仕事をもらったのなら、多少勉強して発言すべきと思いますが、大会が終わるまで閉口するコメントばかり。バレーを、仕事を、侮辱している集団だと思いましたね。仕事が欲しいなら、ジャニーズ枠に頼らないで、実力で勝ち取ればいいと思います」

「メディアは『沈黙』に関して、なぜ会見を開かないのか」

メディアの責任はどうなったのか(写真はイメージ)
メディアの責任はどうなったのか(写真はイメージ)

   一方、「ジャニーズ押し」と思われる人たちからは、新浪氏の発言やメディアに対しての反論が寄せられた。

「所属タレントとの起用に対する対応はもちろんですが、ジャニーズ事務所も被害者も記者会見を開いているだから、テレビ局の上層部も、見解を記者会見という場で表明するべきではないですか? このままでは、テレビ上層部はなんとなくジャニーズだけを締め出してフェードアウトを狙っていると思います」
「世の中の論調に大きな疑問があります。今まで散々使い倒しておいて、よく言うよ、と。30年以上前から、世の中の皆が知っていたことでしょう。当時から被害者も声を上げていたし。今になって叩いていいのだ、と偉そうに正論を言うのはどうなのでしょう。
反省がないのは、メディア、スポンサー企業のほうなのでは? 少なくとも、彼らは謝罪会見を、質問を遮ることなく4時間以上やりました。新浪さんも、どういうつもりで今までサントリーのCMに起用していたのか、6月にBBCで取り上げられてから3か月CMに起用し続けた理由を、はっきり説明するべきなのではないでしょうか?」
「(ジャニーズ事務所の)調査委員会が指摘したように、『ジャニー喜多川の性加害』と『マスメディアの沈黙』が問題の焦点だ。ジャニー喜多川に関しては、新社長が謝罪し、真正面から誠実に対応していくことを記者会見で宣言している。それを見守るのが、経済同友会の立ち位置だろう。新浪氏はスポーツ紙や芸能評論家の立場で再生を期す事務所を叩いているとしか見えない。経済同友会が混乱を助長し、補償を遅らせる働きをしている。
一方、メディアは『沈黙』に関して何の会見も開いていない。一片の声明を出しただけだ。『反省しているか疑わしい』のはメディアだろう。マスメディアに『沈黙』に対する会見を提言し、それが終わるまでは、(メディアに)広告を出さないように各企業に勧めるのが新浪氏の立場だろう」

(福田和郎)

姉妹サイト