三菱重工株、26年半ぶりの高値...大型ロケット「H2A」打ち上げ成功、買い集まる 証券各社の相次ぐ目標株価引き上げも下支え

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   三菱重工業の株価が2023年9月7日の東京株式市場で一時、前日終値比350円(3.9%)高の9262円まで上昇し、1997年2月以来、約26年半ぶりの高値となった。

   三菱重工は過去10年ほど、大型客船やスペースジェット(小型旅客航空機)といった赤字事業に悩まされて株価も低迷が続いたが、それらから撤退し、再成長軌道に乗りつつある。そうした中で大型ロケット「H2A」47号機の打ち上げが9月7日に成功したと伝わり、三菱重工の底力を注視した投資家の買いが入った。

業績も上向き...23年4~6月期最終利益は前年比2.8倍、通期では10年ぶり最高益更新を見込む

   国産ロケットについておさらいしておこう。

   H2Aは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工が共同開発し、現在は打ち上げ業務を三菱重工が行っている。今回の47号機で打ち上げ成功は41回連続と成功率は世界的にみて高いとされている。

   ただ、JAXAが手がける後継機のH3や小型のイプシロンSで、打ち上げ失敗や燃焼試験中の爆発といった事態が2023年になって続いており、日本の宇宙開発を再開するにはH2Aの打ち上げ成功は必須だった。

   今回の成功で、改めて三菱重工の技術力の高さが確認され、H2Aを改良した後継機H3などの開発を本格化する弾みがついたとも言える。

   三菱重工は足元で業績も上向きだ。2023年4~6月期連結決算(国際会計基準)は最終利益が前年同期比約2.8倍の531億円。2024年3月期通期の最終利益予想は前期比45.6%増の1900億円と10年ぶりの最高益更新を見込む。

   第1四半期の決算内容なども踏まえ、ここへきて証券会社による目標株価の引き上げが相次いでいたことも株価を下支えしている。

円安、排熱利用タービン、防衛...野村証券は「需要拡大の追い風」と評価 みずほ、投資判断を最上位に格上げ

   野村証券は9月4日に配信したリポートで、目標株価を6650円から8600円に引き上げた。「円安とGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント=ガスタービンでの発電に加え、その排熱を利用して蒸気タービンでも発電することにより、高い発電効率を実現)と防衛で見方を上方修正」した。

   GTCCと防衛という三菱重工が得意とする分野で、エネルギー効率を求める傾向や防衛予算の拡大といった「需要拡大の追い風をとらえることができている」と評価した。

   SMBC日興証券は9月7日に配信したリポートで目標株価を8400円から1万300円に引き上げた。やはりGTCCと防衛関連に注目しており、GTCCのアフターサービスの売上高予想や防衛受注見通しを上方修正し、防衛関連については受注時の採算も改善するとみている。

   8月にはみずほ証券が投資判断を3段階の真ん中から最上位に格上げするといった動きもあった。

   夏場に一時弱含みだった東京株式市場が、9月に入って全体としてまずまず堅調という背景もあるが、三菱重工株がさらに上値を追っていく可能性もありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)

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