コオロギは、食糧難を回避するための「最適解」になり得るのか?【前編】/コオロギ食「エコロギー」代表・葦苅晟矢さん

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「1つの解になるでしょうし、私は最適解ではないかと考えています」

   カンボジアでのコオロギの養殖事業の話が進む中、葦苅氏はコオロギの「飼育が簡単であり、かつ、繁殖力が強い」という特性を利用した効率的なコオロギの飼育方法について明かした。

――カンボジアでコオロギを養殖するということは、日本のコオロギとは違う品種を育てているのでしょうか。

葦苅氏 日本とは違うもので、「ジャマイカンコオロギ」という品種です。

――ちなみに、何グラムのエサから、何グラムのコオロギが収穫できるのでしょうか。

葦苅氏 250~300グラムのエサで、100グラムくらいのコオロギが採れます。牛や豚だと100グラムの肉を得るのに、さらにたくさんのエサが必要になってしまいます。コオロギの養殖の特徴は「少ないエサ、少ない水、少ない土地」で実現させることが可能で、開墾を必要としないのが特徴です。

――そうなると、コオロギは「飼育が簡単であり、かつ、繁殖力が強い」という特徴がありますが、やはり、この点は来たる将来の食糧難を解決するうえで最適解といえますか。

葦苅氏 1つの解になるでしょうし、私は最適解ではないかと考えています。コオロギには飼育の容易さと自由度の高さがあります。そこに私は、学生時代から魅了されて、今、日本とカンボジアを行き来しながら事業を展開しています。

――カンボジアでのコオロギの養殖の様子をお教えください。

葦苅氏 実は、我々は大きな工場といった、集約型の生産モデルは採用しておらず、現地の複数の農家さんに養殖を委託しています。さながら昔ながらの農家と農協の関係に近いと言えばいいでしょうか。
具体的には現在、約65件の農家さんと契約して、我々のノウハウをお伝えしてコオロギの養殖を行っていただいています。これを買い上げることで、農家さんには現金収入が生まれます。

カンボジアのコオロギ養殖場で生産の様子を見守る葦苅氏(右)

――現地の農家さんの収入につながるという意味でも、サステナブルな事業ですね。素晴らしいですね!

葦苅氏 しかも、コオロギの養殖については新たな開墾は必要ありません。カンボジアの農村部の家屋は高床式の建築方法なので、軒下がデッドスペースになってしまっています。ここに、弊社のコオロギ生産ユニットを置いて養殖を行うのです。
しかも、さきほどエサの与え方で製品の栄養価が変わってくるという話をしましたが、これを利用して、「この農家さんには鉄分が多いエサを与えて鉄の含有量を上げたコオロギを養殖していただく一方で、別の農家さんには亜鉛が多いコオロギを養殖していただく」といった作り分けが可能になります。

――小回りが利きますね!

葦苅氏 これまでの時代、食糧生産はとかく大規模な生産方式になりがちでしたが、私たちが目指していきたいのは「分散・循環型」の食糧生産です。そうなると、コオロギは実に相性がいいのではないかと思っています。

   <コオロギは、食糧難を回避するための「最適解」になり得るのか?【後編】/コオロギ食「エコロギー」代表・葦苅晟矢さん>に続きます。

(聞き手・構成/J-CAST 会社ウォッチ編集部 坂下朋永)



【プロフィール】
葦苅 晟矢(あしかり・せいや)

株式会社エコロギー
代表取締役CEO

2013年、早稲田大学商学部入学。食糧問題と環境問題の同時解決にコオロギが有効であるとの着想から、同大大学院・先進理工学研究科に入学した17年にコオロギ養殖業を手掛ける「株式会社エコロギー」を設立。以降、コオロギの量産体制を確立し、「エコロギーパウダー」を活用した健康補助食品を主力商品として事業を展開している。

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