「植田ショック」は「口先引締め」か? 株安・債権安・円高トリプルショック効果、エコノミストが分析「政府と日銀の口先介入は、今後も続く」

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政府と連携した「口先介入」、その最初の痛烈な一発?

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円安ドル高を牽制?(写真はイメージ)

   植田発言は、円安阻止の政府と連携した「口先介入」の可能性がある、と指摘するのは、村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏は「日銀利上げ観測で長期国債利回りが上昇、円安には歯止め」(9月11日付)の中で、「発言全体を見れば、従来とは異なるトーンで利上げに前向きな発言をした、とまでは言えない」と強調。そのうえで、こう指摘する。

「(植田発言は)円安のけん制を多少意識したものであった可能性はある。黒田東彦前総裁のもとでは、YCCの厳格な運営にこだわる黒田総裁と、その結果進む円安を強く警戒する政府との間で軋轢が強まり、最終的に政府は円買いドル売りの為替介入に踏み切った。
植田総裁の下での日本銀行の政策姿勢はより柔軟であり、政府との関係もより良好だ。7月のYCCの運営柔軟化も為替を意識した決定であることを植田総裁は認めている。
そのもとで、今や長期国債利回りの上昇を1.0%までは容認することができる。利回り上昇を容認することで、ドル円レートに大きな影響を与える日米長期利回り格差を縮小させ、円安を抑えることが可能となる。YCCの柔軟化によって、日本銀行は円安をけん制する手段を手に入れたのである」
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異次元金融緩和はいつ修正される?(写真はイメージ)

   そして、こう説明する。

「長期国債利回りの上昇を促す手段として、政策修正の可能性を仄めかす口先介入がある。さらに、長期国債買い入れ額を減少させることで長期国債利回りの上昇を促すことも可能である。
植田総裁の就任、YCCの柔軟化の2つによって、政府と日本銀行がより協力しながら円安をけん制することができるようになった。昨年のように、政府の為替介入しか円安を止める手段がない状況ではない。
この点から、昨年のような幅で円安が進むリスクは小さく、また、昨年の円安のピークである1ドル152円台前まで進むかどうかは、依然不確実である」

   つまり、政府と日本銀行が互いに「口先介入」など、さまざまな手段を協力し合って、円安阻止に動ける状況になったというわけだ。今回の「植田発言」はその先制パンチということか。(福田和郎)

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