日銀は市場との会話に積極的になった。段階的金融緩和への地ならし
今回の植田発言と市場の反応、エコノミストはどう見ているのか。
日本経済新聞オンライン版(9月11日付)「長期金利、一時0.7%に上昇 2014年1月以来の高水準」という記事につくThink欄の「ひとくち解説」コーナーでは、ドイツ証券調査部長・チーフエコノミスト小山賢太郎氏が、
「YCC(イールドカーブ・コントロール)を厳格に守る必要があるもとでは、先行きの政策正常化を示唆した瞬間に、日銀は金融市場からのYCCアタックを受けます。このため、日銀が先行きの政策正常化を示唆することは難しい状況でした。
しかしながら、7月のYCCの上限の事実上の撤廃によって、『先行きの政策正常化を、事前に金融市場に織り込ませる』という当たり前のことが、日銀にも可能になっている可能性があります。週末の植田総裁のインタビュー記事は、その兆候と捉えることも可能でしょう」
と説明した。
同欄では、ニッセイ基礎研究所主席研究員の井出真吾氏も、
「日銀は市場との対話に前向きになったようで、大いに歓迎したいと思います。マイナス金利解除など金融緩和の縮小は、総じて景気にマイナスに作用するので、サプライズ実施は大迷惑。少しずつ市場や企業活動、住宅ローンはじめ個々人の生活に織り込ませていくのが望ましいと考えます」
と、今回の植田発言を市場への「配慮」として評価した。
ヤフーニュースコメント欄では、三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員の小林真一郎氏も、
「今回の総裁発言は、将来的に条件が整ったときに、いきなり金融政策を変更すれば金融市場へのインパクトが大きくなるため、金融引き締めを市場に徐々に織り込ませておいて、それに追随する形で政策修正に踏み切るための地ならししと考えられます。このため、長い期間を中心に、金利が上昇しやすい展開がしばらく続きそうです。
一方、金利の先高観は円安の歯止めに有効であり、輸入物価の上昇圧力を和らげる効果もあります。円の下落に対して口先介入を続けていた政府にとっても一息つけそうです」
と、市場への地ならしと同時に、円安ストップ効果も狙った一石二鳥の発言だと説明した。