裏方に徹するということ
『THE MANZAI』『花王名人劇場』『笑ってる場合ですよ』『お笑いスター誕生!!」。続々と新番組が生まれ、1981年に『オレたちひょうきん族』が始まります。左遷と言われた東京で、次々と大ヒット番組が誕生し、吉本の芸人が台頭していきました。
「芸能事務所でも、一般企業でも同じこと。担当するタレント、サービス、商品が売れれば、担当者が『自分の手柄だ! 業界での勝利だ!』と思うのは、ありがちな話です。でも、僕はそう思えませんでした。『土俵に上がってるのは芸人や。成功してる、勝ってる言うても俺やない』。自分はただの現場マネージャー」(大崎さん)
私はこのストーリを読んだとき、転職で失敗する人の傾向を思い出していました。キャリアカウンセリングなどをしていると、転職する人の多くは、自らの実績をデフォルメ気味に誇張します。このような傾向のある人は、転職先で人間関係に苦労します。いまの実績は、会社から与えられた役割についてきた成果であることをわからないからです。
多くの場合、責任ある立場を務めたり、何らかの目立つ成果を出していたりしたとしても、その人が1人ですべてできるはずもありません。上役の引き立てがあり、周囲の支援や理解があり、会社の看板や経営資源を活用してこそ成り立つものです。そこを理解していないと悲劇が起こります。ジョブホッパーとなってしまう傾向の強い人だからです。
激動の人生を歩んだ大崎さんが、自分や大切な人たちの「居場所」をつくるために心がけてきたことはなにか? 他の仕事にも教訓となる実話が多くの人に共感されるでしょう。仕事に悩んだことはありませんか、辞めたいと思ったことはありませんか、生きづらさを感じたことのあるアナタに読んでもらいたい一冊です。(尾藤克之)