米欧低迷、独り勝ち日本株はどこまで上る? エコノミストが指摘する3つのリスク「米中ハイテク戦争」「政府日銀の為替介入」「そして企業自身の罪...」

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巨大不動産デフォルトに加え、米中ハイテク戦争の危機

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中国リスクは?(写真は中国国旗)

   一方、中国経済が巨大なリスク要因だとして、新たな米中対立激化に注目するのが、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏は、リポート「中国が政府職員にiPhoneの使用を禁じる:米国は中国への先端半導体輸出規制の戦略見直しか」(9月8日付)のなかで、巨大不動産会社のデフォルト危機と並んで急浮上した、米中ハイテク戦争の危機をこう説明する。

「中国政府は中央政府機関の職員に対して、アップルのiPhoneやその他外国製のデバイスを職場に持ち込み使用することを禁じた、とウォールストリート・ジャーナル紙が報じている。中国政府は過去数年間にわたり、一部の政府機関でiPhoneの職場での使用を制限してきたが、今回はその措置を拡大した模様だ」

   この措置の狙いの1つは、米国の制裁措置に対する報復だ。米国は昨年10月、先端半導体製造装置の中国への輸出規制を導入したばかりか、多くの州で、中国企業のアプリTikTokの利用を公務員に禁じている。

   また、国内製品の利用を促し、国内企業を支援する狙いもある。中国政府は既に、政府関係機関や国有企業に対して、外国製のコンピューター、OS、ソフトウエアを国内製に置き換えるよう促している。

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米バイデン大統領(ホワイトハウス公式サイトより)

   そんななか、米政府にとっては衝撃的な事実が現れたという。8月下旬にファーウェイは5Gの水準に達した新しいスマホ「Mate 60 Pro」の発売を発表した。米国の輸出規制によって、5G対応のスマホをファーウェイは製造できないと米国政府は考えていた。

   ところがだ――。

「調査会社がこのMate 60 Proを分解したところ、同端末には中国の半導体メーカーSMIC(中芯国際集成電路製造)が製造した新たな『麒麟9000s』チップが搭載されていた。これは、SMICの最先端7ナノテクノロジーを初めて使用したものだ。
バイデン政権が昨年10月に輸出規制を導入したのには、14ナノ半導体に中国がアクセスするのを阻止する狙いがあった。しかし、実際には、そうしたもとでも、最先端の3ナノから5年遅れの7ナノ半導体を中国が製造できていたことになる」

   木内氏はこう結んでいる。

「バイデン政権の受けた衝撃は大きい。この事態を受けてバイデン政権は、対中戦略の見直しを迫られるだろう。制裁措置がさらに強化され、米国など先進国と中国の間での経済、貿易面での対立が一層激化するきっかけとなる可能性もある」

   実際、9月7日(現地時間)の米株式市場では、主力製品「iPhone」の中国政府使用禁止を受け、アップル株が連日の大幅安となり、時価総額が2日間で1900億ドル(約28兆円)減った。

   ハイテク株中心のナスダックは大荒れの展開となり、これを受けて9月8日の東京株式市場では、米中対立が深まるとの懸念から、33業種中30業種が下落する大幅安となり、日経平均は下げ幅を480円近くまで広げた。

   日本株にとって「中国リスク」がいよいよ現実味をおびてきたようだ。(福田和郎)

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