日本自動車工業会(自工会)は2023年10月28日から東京ビッグサイト(東京都江東区)で始まる「ジャパンモビリティショー2023」のメディア向け説明会(記者会見)を行った。
コロナ禍を経て、これまでの「東京モーターショー」から生まれ変わる新たなイベントとは、どんなものなのか。期待して記者会見に臨んだが、驚くことが多かった。
参加企業はIT、金融、観光など幅広く400社以上に だが、観客目標は30万人減の100万人...
これまでの東京モーターショーは文字通り自動車が展示の中心で、近年は若者のクルマ離れから集客人数が減っていた。
そこで今回から自動車に限らず、「陸海空」のモビリティー(乗り物)に範囲を広げることになった。「空飛ぶクルマ」など夢のある未来の乗り物を展示することで、老若男女に乗り物全般に関心をもってもらうのが狙いだ。
前回、2019年の東京モーターショーの参加企業数は自動車や部品メーカーを中心に192社で観客動員数は130万人だった。
これに対し、ジャパンモビリティショーの参加企業数は陸海空の関連企業ほか、IT、金融、建設、観光、エネルギーなど幅広い分野から400社以上が参加するという。ところが目標とする観客動員数は前回の実績を下回る100万人という。
いったいこれは、どういうことか。
8月30日に開いた自工会の記者会見で、モーターショー委員会の長田准委員長(トヨタ自動車執行役員)は「国際的な自動車ショーで100万人を超えるショーは、中国の上海などを除くと、ほとんどなくなってきている」と、モーターショー全般の地盤沈下を認めた。
長田氏によると、前回の東京モーターショーから4年たち、新型コロナウイルスの感染拡大で社会が一変したことから、リアル開催のイベントにどれだけの集客が期待できるか、読めない部分があるという。
このため100万人と控えめな数字だが、長田氏は「自動車ショーとして復権し、クルマ社会の楽しさを知っていただくには、やはり100万人はほしい。できれば130万人を超えていきたい」と本音を漏らした。
目先のコンセプトカーより、2030~35年見据え「いろんなモビリティーの可能性を提案」
従来の東京モーターショーはトヨタ自動車はじめ各メーカーが数年以内に発売する新型車や近未来のコンセプトカーを展示するのが定番だった。
これに対して、ジャパンモビリティショーは「近未来のコンセプトカーを単純に並べるのではなく、陸海空でいろんなモビリティーの可能性を提案する」「3~4年後という短いピッチではなくて、2030年か2035年くらいの提案をしたい」(長田氏)という。
では、具体的にどんなメーカーがどんな展示をするのか。記者会見ではそんな質問が相次いだ。
ところが自工会の説明は、いまひとつわかりにくかった。
新たに参加する企業について、自工会は「陸海空なので、陸上だけでなく、航空分野の企業も入っている。三井住友海上保険のように保険・金融分野も新しい。東進ハイスクールもモビリティーと教育というコラボレーションの中で初めて参加する」と説明するにとどまった。
海外自動車メーカー、新規参入は限定的か...「空飛ぶクルマ」などスタートアップ企業の参加も
肝心の自動車メーカーはどうなのか。
前回の東京モーターショーでは海外メーカーの出展がメルセデス・ベンツやルノーなどに限られ、海外勢の関心の低さが目立った。
残念ながら、今回も欧米メーカーはメルセデス・ベンツやBMWなどにとどまるようだ。新たに参加するのは中国のBYDのほか、新興電気自動車(EV)メーカーのEV モーターズ・ジャパンや台湾系のHW ELECTRO(エレクトロ)などに限られるようだ。
このほか、「空飛ぶクルマ」を開発するようなスタートアップ企業も参加するとみられるが、自工会はなぜか明言を避けた。
自工会は新装のジャパンモビリティショーを「自動車業界だけでなく、他産業やスタートアップも多く参加し、生まれ変わったイベントになる」と強調する。だが、今回の記者会見を聞く限り、具体的なイメージはあまり浮かばなかった。
新規参入の代表例が東進ハイスクールというのでは、陸海空のモビリティーからあまりにもかけ離れている。
初開催のジャパンモビリティショーに期待しすぎてもいけないのかもしれないが、乗り物ファンとしてはなんとも心もとない印象を受けた。(ジャーナリスト 岩城諒)