1割強が「免税事業者とは取引しない」「取引価格を引き下げる」 導入開始まで1か月きったインボイスの「現在地」

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煩雑な作業、大きな事務負担... 現場は混乱必至?!

   さらに、インボイス制度の開始後、免税事業者と「取引しない」「取引価格を引き下げる」と答えた企業を業種別(上位15業種、母数20以上を対象)に分析したところ、「飲食店」が26.0%(23社中、6社)で最も高かった。

   東京商工リサーチによると、飲食店は店舗や業態により軽減税率と標準税率の複数税率を扱う。仕入先が免税事業者の場合、経過措置があるものの、「飲食店」の税負担が高まる可能性がある。「飲食店」は小規模事業者が多いだけに、負担増を避ける意向が強い、とみている。

   次いで、ソフトウェア開発などの「情報サービス業」が22.2%(292社中、65社)。「情報サービス業」は、客先に常勤するなど技術力のあるフリーランスとの取引も多く、他の業種と比べて取引の見直しを進めているとみられる。

   「廃棄物処理業」は20.0%(50社中、10社)、商社などの「各種商品卸売業」17.9%(39社中、7社)、「自動車整備業」が17.2%(29社中、5社)、大工工事など「職別工事業」16.0%(174社中、28社)、「電子部品・デバイス・電子回路製造業」16.0%(56社中、9社)、リース業など「物品賃貸業」15.8%(63社中、10社)、「印刷・同関連業」15.7%(76社中、12社)、「職業紹介・労働者派遣業」15.3%(39社中、6社)など、純利益率が平均より低い業種が上位に多かった。【図3参照】

図3 「取引しない」「取引価格を引き下げる」と答えた企業を業種別でみると、「飲食店」が26.0%でトップだった(東京商工リサーチ調べ)
図3 「取引しない」「取引価格を引き下げる」と答えた企業を業種別でみると、「飲食店」が26.0%でトップだった(東京商工リサーチ調べ)

   国税庁によると、7月末のインボイス制度の登録事業者は370万社にのぼり、課税事業者の大半は登録を完了したとされる。インボイス制度の登録は任意で、免税事業者を選択する事業者は基本的に小・零細規模のため、煩雑な作業などで事務負担も大きい。

   制度が始まると、登録番号の確認や入力、記載要件が不備の適格請求書、課税事業者と免税事業者への対応に混乱が生じる可能性があるほか、免税事業者に対して一方的に取引停止や過度な取引額の減額を求めると、独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法などに抵触することが想定されている。

   10月の開始を目前に控えるが、いまだに準備不足や態度を決めかねている企業は少なくない。インボイス制度の導入が中小・零細企業やフリーランスの廃業を加速させないよう、慎重な運用が求められる。

   なお、調査は2023年8月1~9日にインターネットで実施。5896社から、有効回答を得た。調査は今回で3回目(第1回は2022年8月20日公表、第2回は22年12月14日公表)。資本金1億円以上を大企業、1億円未満(資本金がない法人を含む)を中小企業と定義。今回の調査から、個人事業主を除いた。

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