「ようやく業績回復の矢先、まだ2割が赤字」中国の全面禁輸、水産物事業者に打撃広がる...物価高で倒産4年ぶり増加、大ピンチどうする岸田政権?

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   福島原発処理水の海への放出で、中国が日本産水産物を全面禁輸したことを受け、水産業者の間にダメージが広がっている。

   水産庁による聞き取り調査で、ホタテやナマコなどの価格が下落していることが分かり、政府は2023年9月5日、207億円の支援対策費を水産事業者向けに出すことを決定した。

   そんななか、東京商工リサーチが9月4日、「国内水産事業者3099社動向調査」を発表。零細企業が多い水産事業者の2割が赤字のうえ、倒産が4年ぶりに増加している実態がわかった。中国の禁輸措置で、打撃はさらに拡大しそうだ。

  • 日本と中国の国旗(写真はイメージ)
    日本と中国の国旗(写真はイメージ)
  • 日本と中国の国旗(写真はイメージ)

零細事業者が大半、6割が減収・赤字の厳しい経営が続く

   東京商工リサーチの調査は、全国3099社の「水産事業者」が対象だ。

   3099社の最新期(2022年度)の売上合計は、2兆8627億200万円(前年比5.8%増)で、緩やかに回復している。コロナ新規感染者数が落ち着き、飲食業の需要が戻ったことが大きい。また、最新期の利益合計は、439億800万円(同6.6%増)だった。売上高の回復や、補助金・助成金など支援効果もあったとみられる【図表1】。

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(図表1)水産事業者の業績は改善傾向にあった(東京商工リサーチ調べ)

   ただし、売上高別の分布をみると、最多ゾーンは1億円未満の1117社(36.0%)。次いで、1億円以上5億円未満が1100社(同35.5%)で、5億円未満が7割以上(71.5%)を占める。大半が小・零細規模の事業者だからだ【図表2】。

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(図表2)水産事業者の売上高別構成(東京商工リサーチ調べ)

   それは従業員の人数でみてもわかる。10人未満が半数(50.6%)に達し、50人以上のところは1割以下(8.9%)だ。【図表3】。

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(図表3)水産事業者の従業員数別構成(東京商工リサーチ調べ)

   また、回復基調にあるとはいえ、2022年度は増収が約4割(42.5%)だけで、減収が約3割(27.5%)、また、約4社に1社(23.1%)が赤字だった。アフターコロナの業績回復度合いが、二極化していることがわかる【図表4】。

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(図表4)水産事業者の対前年度比の増収・減収・赤字(東京商工リサーチ調べ)

倒産が4年ぶり増加、燃料や物価高、人手不足のトリプルパンチ

   こうしたことに加えて心配されるのは、水産事業者の倒産(負債1000万円以上)が、4年ぶりに増加に転じていることだ。直近の2023年1~7月に23件(前年同期比35.2%増)と、大幅に増えているのだ【図表5】。

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(図表5)水産者事業者の倒産が増加傾向に(東京商工リサーチ調べ)

   これは、大手の業績は堅調に改善しているが、小・零細規模の業績の回復が遅れ、倒産を押し上げているため。理由としては、まずコロナ関連支援の効果が薄れたこと、従業員の高齢化が進み、人手不足が深刻なことがあげられる。

   さらに、事業を継承する後継者の不足と、円安やエネルギー価格の上昇による、物価高と燃料費を中心とするコスト増が経営を圧迫している。そこに今回、処理水放出による風評被害と、中国の日本産水産物禁輸措置が加わったわけだ。

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漁師の表情にも笑顔が戻っていたが...(写真はイメージ)

   東京商工リサーチでは、こうコメントしている。

「コロナ禍の低迷からようやく抜け出す矢先の出来事で、国内に水産事業者にとって新たな痛手となる可能性がある。今後、公表される政府の水産事業者への支援策次第で、増勢が続く倒産をさらに押し上げることも危惧される」

   調査は、企業データベース(約390万社)から、主業種が「漁業」と「水産食料品製造業」を抽出し、「水産事業者」と定義した。「水産物卸売業」と「水産物小売業」は対象から除いた。2022年4月~2023年3月に迎えた本決算(2022年度)を最新期とした。調査は今回が初めて。(福田和郎)

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