倒産が4年ぶり増加、燃料や物価高、人手不足のトリプルパンチ
こうしたことに加えて心配されるのは、水産事業者の倒産(負債1000万円以上)が、4年ぶりに増加に転じていることだ。直近の2023年1~7月に23件(前年同期比35.2%増)と、大幅に増えているのだ【図表5】。
これは、大手の業績は堅調に改善しているが、小・零細規模の業績の回復が遅れ、倒産を押し上げているため。理由としては、まずコロナ関連支援の効果が薄れたこと、従業員の高齢化が進み、人手不足が深刻なことがあげられる。
さらに、事業を継承する後継者の不足と、円安やエネルギー価格の上昇による、物価高と燃料費を中心とするコスト増が経営を圧迫している。そこに今回、処理水放出による風評被害と、中国の日本産水産物禁輸措置が加わったわけだ。
東京商工リサーチでは、こうコメントしている。
「コロナ禍の低迷からようやく抜け出す矢先の出来事で、国内に水産事業者にとって新たな痛手となる可能性がある。今後、公表される政府の水産事業者への支援策次第で、増勢が続く倒産をさらに押し上げることも危惧される」
調査は、企業データベース(約390万社)から、主業種が「漁業」と「水産食料品製造業」を抽出し、「水産事業者」と定義した。「水産物卸売業」と「水産物小売業」は対象から除いた。2022年4月~2023年3月に迎えた本決算(2022年度)を最新期とした。調査は今回が初めて。(福田和郎)