3度目の公的資金 迫る返済期限に資金確保か!?
きらやか銀行は、リーマンショック後の2009年9月に、200億円の資本注入を受けた(返済期限は2024年9月)。東日本大震災後の12年には、仙台銀行と経営統合(じもとHD傘下)。公的資金を受け入れても経営責任を問わないことを明確にした「震災特例」で100億円を資本注入(返済期限は2037年12月)。2度にわたる公的資金の受け入れで、合わせて300億円の資本注入を受けた。
このうち、200億円の返済期限が1年後(24年9月)に迫っている。つまり、今回の公的資金の資本注入とSBIHDからの追加出資で、きらやか銀行は返済の原資を確保したことになる。
そもそも、「コロナ特例」による地銀などへの公的資金の資本注入は、2020年に政府が金融機能強化法を改正したもの。「15年以内」という返済期限をなくし、申請の条件としていた経営体制の見直しを不要としたことで、地銀が公的資金の注入を申請しやすいようにした制度だった。公的資金で地域を支える地銀の財務基盤を強めることで、地元の中小企業への融資を円滑にするのが目的だ。
地方の取引先には、コロナ禍で大きな打撃を受けた観光業や飲食業が少なくない。きらやか銀行は、事業再生に向けた設備投資の資金需要が今後、増えることを、申請の理由としている。
公的資金の資本注入が決まった1日、じもとHDの鈴木隆社長(仙台銀行頭取)は記者会見で、
「昨年5月に(公的資金注入の検討を)表明してから1年以上たったが、ようやくコロナ禍で苦しむ事業者支援をより一層徹底できる。地域金融機関としての責務を全うするべく、グループ役職員一丸となって地元企業の支援によりいっそう努めていく」
と述べた。
きらやか銀行の川越浩司頭取も、「山形の経済を支える責務が認められた」と語り、公的資金をコロナ禍で疲弊した中小企業のために使う考えを強調している。
とはいえ、きらやか銀行が公的資金を受け入れるのは、今回で3度目だ。180億円の返済計画では、同行が2049年3月期までの約25年間にわたり、毎年7~17億円の純利益を積み上げる必要があるという。
ただ、その一方で、きらやか銀行の21年3月期決算はコロナ禍の影響で最終利益が赤字に陥った。国内で超低金利が続くなか、海外債券の運用で利益を得ようとしたが、含み損が膨らんだ。そんな状況で、公的資金は地元で苦境に立たされている中小企業に、ホントに流れていくのだろうか――。