加速するGX、求人動向は?...2016年比で5.87倍に 技術系も、企画系も...エネルギー業界以外でも、求められるGX人材

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   リクルート(東京都千代田区)は2023年8月30日に「グリーントランスフォーメーション(GX)に関する求人と転職の動向」について発表した。

   それによると、「リクルートエージェント」におけるGX求人の推移に関して、2016年度を「1」とした場合、2022年度では5.87倍だという。一方で、実際の転職者は同年度比で3.09倍。2020年度を境に、求人、転職者ともに伸びが顕著だが、人材の需給にはギャップがあるようだ。

   また、「リクルートエージェント」におけるGX求人の推移を「業界別」で見ると、同じく2016年度を「1」とした場合、採用に積極的なのは「化学業界メーカー」(8.65倍)、「IT通信業界」(8.04倍)、「サービス・アウトソーシング業界」(6.52倍)と続いている。

  • GX人材の求人動向は?(写真はイメージです)
    GX人材の求人動向は?(写真はイメージです)
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業界別のGX求人...積極的なのは「化学業界メーカー」、「IT通信業界」、「サービス・アウトソーシング業界」

   グリーントランスフォーメーション(GX)とは、化石燃料ではなく、いわゆる二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスを発生させない再生可能エネルギーへの転換を促すなどして、社会システム全体を変革していこうとする取り組みだ。

   こうした温室効果ガスの排出削減(カーボンニュートラル)を、経済や企業の成長機会ととらえることも、取り組みのポイントとなっている。ちなみにGXは、デジタルトランスフォーメーション(DX)と密接な関係があり、GXの実現にはDX――すなわち、デジタルのチカラも必要不可欠だ。

   では、GXを担う人材の求人動向はどうなっているのか。今回の調査は、同社によると、「GX関連の求人が多岐にわたるため定義が難しく、定量的なデータとして取得するのが難しい状況」としたうえで、「リクルートエージェント」の求人データから独自にGXに関する求人を定義し、テキストマイニング技術を用いて定量分析を行ったという。

   今回の調査における「GX求人」の定義は、「経済産業省のホームページ記載のGXに関する情報を基に『カーボンニュートラルを目標にした経済社会システム全体に関わる仕事内容や業務内容に準ずるもの』」とした。

(リクルートの作成)
(リクルートの作成)

   「リクルートエージェント」における「GX求人」の推移のグラフによると、2016年度を「1」とした場合、2022年度は5.87倍となった。2020年度を境に急速に伸長している。一方で、実際の転職者は3.09倍だった。求人の増加に対して、希望者の伸び幅が小さいのが特徴だ。

   リクルートは、「企業が求めるスキルを全て備えている方は市場には少ない。だからこそ、活躍の可能性のある方・素養のある方を採用し事業を推進していく覚悟が必要だ。GXに関連するポジションは、民間企業出身ではない国際NGO・NPOや国際機関出身者が活躍している事例もある」とコメントしている。

(リクルートの作成)
(リクルートの作成)

   続いて、業界別のGX求人の推移によれば、採用に積極的なのが「化学業界メーカー」(8.65倍)、「IT通信業界」(8.04倍)、「サービス・アウトソーシング業界」(6.52倍)、「電気・電子・機械業界メーカー」(5.87倍)という順になっている。

   リクルートは、「特に採用に意欲的なのは、エネルギー(化学、公共インフラ・官公庁含む)、電機、ITなどの業界で、GX求人の業界別の伸びをみてもその傾向は顕著だ。専門の新部署を立ち上げるのではなく、既存のコーポレート部門や事業部門に担当者を置くケースも増えている」としている。

社内外の横断プロジェクトを推進できる人材ニーズは高い

(リクルートの作成)
(リクルートの作成)

   つぎに、GX求人に関して、職種別ではどうか。職種別の求人数では、2022年度では「経営企画・事業企画・業務企画」が「12.65倍」にまで増えている。かたや、「化学エンジニア」は「7.69倍」、「品質管理・品質保証/認証・品質分析」が「6.88倍」、「機械エンジニア」が「6.82倍」となっている。

   エンジニアをはじめとする技術系の職種の求人が目立つ理由について、リクルートでは、

「FIT(固定価格買取)制度や電力自由化などの波を受け、従来の電力会社(旧一般電気事業者)だけでなく、石油・ガス、新電力、電機、IT業界などから再生可能エネルギー関連の求人が出始めた。特にプラントエンジニア、施工管理、プロジェクトマネジメントなどの技術系求人が多かった印象だ」

   としている。

   一方、技術系のポジションはもちろん、企画系(新規事業探索、調査・研究、研究テーマの企画推進、新しいビジネスモデルの創出、ビジネスモデル構築など)のポジションも増加しているという。リクルートは、以下のように見ている。

「2020年になると、さらに多くの業界のコーポレート側で新設されたサステナビリティ推進部などから、環境対応の人材ニーズが増えた。2020年10月の菅元首相のカーボンニュートラル宣言以降は、事業部側から具体的なグリーン戦略の求人、新規事業の求人が増加し続けている。具体的には太陽光発電、風力発電、水素・アンモニア、蓄電池関連などだ。従来のエネルギー業界はもちろん、エネルギー業界以外のさまざまな企業で増加している」
「(企画系では)政策渉外(ルールメーク)、さらにマーケティング、事業提携・M&Aなどの要素も含まれる。こういったポジションでは異業界からの転職も進んだ。2022年には『GX実行会議』も始まり、『GX』という言葉が定着、一般的になり企業の採用活動の場面でも多く出てくるようになった。GXのためのDX 関連の求人も増加している」

   今後の見通しについては、リクルートエージェントのキャリアコンサルタント、羽田野直美氏が以下のコメントを寄せている。

「カーボンニュートラルが先行していたが、2022年あたりからサーキュラーエコノミー(CE)関連求人も増加している。特にケミカルリサイクル関連の企画系、技術系求人が顕在化し始めており、この動きはまだ継続するだろう。ライフサイクルアセスメント(LCA)などの求人も増加している」
「いずれの動きも1社だけで取り組めず、解決もできない課題に向き合っているのが現状だ。業界内や業界をまたいだ大きな連携が必要となってきており、社内、社外の横断プロジェクトを推進できる人材ニーズは高まる一方であり、いかに人材を獲得できるかが喫緊の課題になっている」

   なお、「GX」が注目されたのはここ数年だが、リクルートによると、環境・エネルギー関連の求人が出始めたのは、2011年以降だという。背景には、震災後にエネルギー問題が起こったことから、各社が再生可能エネルギーへの対応を進めたこと。2016年には電力の小売全面自由化も開始された影響などがある。

   サステナビリティの観点でも、2015年のパリ協定や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国連責任投資原則(PRI)への署名などの動きもあり、2016年以降に企業などでも徐々に環境問題への対応が進み始めた。とりわけ、国内でカーボンニュートラルへの関心が高まったのは、2020年10月、菅 義偉元首相の所信表明演説で「2050年までのネットゼロ」の目標が掲げられたことによる。

   この調査は2023年6月から8月にかけて、「リクルートエージェント」求人データをテキストマイニングしたものと『リクルートエージェント』求人データをもとに分析した。

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