営業管理職が悩みがちな「部下の育成」問題 事細かな指導は逆効果...やるべきは自ら手本を示すこと(大関暁夫)

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   ここまでの2回は「営業管理」をテーマに、「営業のヒント」をお伝えしてきました。営業管理者が管理すべきものは何なのか――。今回は、いわゆる「営業管理」の定義と管理の基本的な考え方について説明します。

営業管理者の役割は「実績」「行動」「育成」 管理者として、管理に専念を

   営業管理者が管理すべきものは3つあります。それは、「実績」「行動」「育成」です。

   「実績」はまさに経営から課された、営業チームとしての実績管理です。

   「行動」は営業実績管理に直結する、営業担当者の営業活動の管理です。ようするに、目標数字だけを与えて「管理」とするのではなく、どのような「行動」をどのように計画的に遂行するかを指導しながらその進捗を管理するのです。

   「育成」は、それに耐えうる営業担当者を育てるために、具体的に何を身につけるべきかについて、管理者として伴走しつつ指導することです。

   次に、3つの管理すべき事象「実績」「行動」「育成」それぞれについて、営業管理者に求められることを説明します。

   まず「実績」管理に関しては、「営業管理者は管理に専念すること」です。言い換えると、自身が「実績」目標を持ったプレーヤー兼務のプレイイング・マネージャーでは管理者はおぼつかない、ということです。

   営業管理という仕事は、決して片手間でできるような類のものではありません。「実績」「行動」「育成」どれも怠りなく、しっかり管理を有効に機能させるためには管理に専念する必要があるのです。

   プレイイング・マネージャーとして個人で営業目標を持ってしまうと、最悪のケースでは個人目標だけでも達成しようとして、管理が片手間になってしまうことになりかねません。ですから、管理者は個人の「実績」目標を持つことなく、営業チーム全体の「実績」目標を管理者自身の目標とする必要があるのです。

   経営者が管理者にも個人目標を持たせたいとして譲らない場合には、「個人目標を持たない代わりに、営業チーム全体の目標達成を管理者のミッションとします」として、許諾を得るのがいいでしょう。管理者が管理に専念すること、それが管理有効化への第一歩です。

常にコミュニケーションのキーマンとして「行動」を 社内コミュニケーションも密に

   「行動」管理に関して求められることは、「管理者は常にコミュニケーションのキーマンとして動くこと」です。前回「コミュニケーションの3原則」でも説明しましたが、まず日々担当者と個別でのコミュニケーションをしっかりとることです。

   前回申し上げた通り大切なことは、毎日夕方担当者の営業活動が落ち着いた段階で、1人55分から10分でいいので、今日の誰と会って、どのような話をして、今何が課題になっているのか、しっかりと共有して個別にフォロー、アドバイスをすることです。

   社内で他部署とのコミュニケーションを密にすることも重要です。製造、開発部門と営業部門の折り合いが悪くては、担当者の日々の「行動」に大きな支障が出ることもあります。

   それを未然に防ぎ、社内の雰囲気が営業活動すなわち営業担当者の「行動」に対して常に協力的になってくれるように、日々関係各部門とコミュニケーションを密にしつつ情報交換、意見交換を通じて部門案の相互理解をはかることが大切なのです。

   営業管理者は常に担当者が「行動」しやすいように、地ならしに努めることがその役割であると理解してください。

自ら手本を示して「育成」を 同行訪問を多くして、さまざまなパターンを学ばせる

   「育成」に関して求められることは、「営業管理者は、教えるのではなく手本を示すこと」です。管理者は部下の教育に関して、ややもすると、「こうしろ」「ああしろ」と事細かに指導したくなるものですが、これが実はあまり効果的ではないのです。

   知識であれば、「これを覚えなさい」と具体的な指示をすることで、身につけさせることが可能です。ところが、営業活動特に相手との折衝については、言葉で指導してもなかなかイメージがしにくく、担当者にとっては右から左になりやすいのです。

   営業活動に関する「育成」の基本は、指導者自ら手本を示すことです。

   人間は見て学ぶことで人の行動を自分のものにすることができる、という習性があります。小さい子供が親の行動を見て、見よう見まねで自分の行動として身につけつつ、成長していくのと同じです。

   ですから営業の初心者に対しては、担当者の営業活動を横で見てあれこれ言うのではなく、まずは「私が折衝をするところを、よく見て勉強しなさい」と指導するのが正しい「育成」指導のあり方なのです。

   ぜひ、管理者は営業初心者とは極力同行訪問を多くして、さまざまなパターンの営業折衝を目の前で見せて学ばせてください(初期段階における、営業初心者の優秀営業担当者への随行営業学習も有効です)。

   同じような考え方から、営業のロールプレイイングにも注意が必要です。

   ロールプレイイングは、一般的にはセールスの疑似演習として活用されるケースが多いと思います。もちろん、営業現場を想定して場慣れする目的でこれを活用することは、当然有効ではあります。しかしロールプレイイングにはもう一つ重要な活用法があります。

   それは、優秀営業担当者のセールストークを見て学ぶ、という機会にすることです。優秀営業担当者のセールスノウハウを営業チームで共有し、全担当者のレベルアップをはかる機会をつくることもまた、「育成」管理の領域での管理者の役割です。【つづく】(大関暁夫)

大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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