円安が急加速している。2023年9月5日(現地時間)のニューヨーク外国為替市場では円相場が一時、1ドル=147円80銭にまで値下がりし、今年の最安値を更新した。
このところ好調な米国の経済指標や、原油高を背景に急速にドル買い円売りが進んだことが背景にあるとみられる。
急ピッチに進む円安に危機感を抱き、財務省の神田真人財務官は9月6日(日本時間)、「口先介入」を試みて市場をけん制したが、効果は微々たるものだった。政府と日本銀行の本格的な為替介入はいつあるのだろうか。
急激な円安のきっかけは、サウジとロシアの原油減産
1ドル=147円80銭は、昨年(2022年)11月上旬以来、約10か月ぶりの円安・ドル高水準だ。
急激な円安のきっかけは、産油国の減産方針を受け、5日のニューヨーク原油先物市場で原油価格が一時、約10か月ぶりの高値をつけたことだ。
サウジアラビアが5日、現行の日量100万バレルの原油の自主減産を12月まで3か月延長すると表明した。ロシアもこれに同調、年末まで輸出量を30万バレル減らすと発表した。これを受けて、原油の国際指標である北海ブレント原油先物は一時1バレル90ドル台と、10か月ぶりに90ドルを上回った。
このところ堅調な米国経済に加え、原油価格が急上昇すれば、インフレの収束に時間がかかることになる。そして市場に、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融引き締めが長期化することへの警戒感が一気に広がった。
それにより、日米の金利差の拡大が意識され、運用に有利となるドルを買って円を売る動きが優勢となり、円売りドル買いが進んだ。
こうしたなか、神田真人財務官は9月6日午前8時、財務省で記者団の取材に応じた。報道をまとめると、外国為替市場での円安進行について、「急激な変動が起こっている」と述べたうえで、「こういった動きが続くようであれば、政府としてはあらゆる選択肢を排除せずに適切に対応していきたい」と市場をけん制した。
神田財務官は、「為替相場はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映して、安定的に推移することが望ましい」と強調。足元で起こっていることは、「投機的な行動、あるいはファンダメンタルズで説明できないような動きが見られており、私どもとしては高い緊張感を持って注視している」と述べた。
また、急激な為替相場の変動は企業や家計に不確実性をもたらすとしたうえで、「こういった動きが続くようであれば、政府としてはあらゆる選択肢を排除せずに適切に対応する」と語った。
この発言を受け、6日の東京外国為替市場の円相場は一時、前日比0.2%ドル高の1ドル=147円37銭を付けた。しかし、すぐに147円57銭まで下落。前日の最高値147円80銭に比べ、わずか20銭程度動いただけだった。
政府・日本銀行が昨年9月22日、約24年ぶりとなる円買いドル売りの為替介入に踏み切ったのは、145円90銭に円安が進んだ局面だった。その後、10月21日に151円95銭まで上昇した局面で、また、同24日には149円台後半で介入を実施している。