「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
ChatGPT職種別、業種別、部署別の使えるプロンプト
2023年9月4日発売の「週刊ダイヤモンド」(2023年9月9日号)の特集は、「コピペで使える! ChatGPTプロンプト100選」。職種別、業種別、部署別にまとめているので、きっとあなたがすぐに利用できるChatGPTのプロンプトが見つかるはずだ。
「ChatGPTなんて信用できない。うその回答も多く、仕事には使えない」。弁護士、税理士など、そう考える士業の専門家は多いだろう。そこで、ChatGPTの弱点を回避し、士業のプロが現場でそれぞれ使える専用プロンプトを紹介している。
弁護士業界に今、AI(人工知能)活用の大波が押し寄せているという。法務省が8月1日、企業間で結ぶ契約書をAIでチェックするサービスは弁護士法に抵触しないとする指針を公表したからだ。
リーガルテック企業の先駆けである弁護士ドットコムは、この指針を受けて、企業の法務部や法律事務所向けにAIによる契約レビューを行う契約業務や、コンプライアンスチェック業務など、6領域21事業を新たに始めると発表した。
個人事務所の弁護士であっても、ChatGPTを活用する方法はあるという。専門外の相談でも簡単に当たりを付けられるそうだ。陳述書のたたき台を作成する作業は、法律事務をサポートするパラリーガルが担うことが多い。
だが、プロンプトの冒頭に、「temperature=0として回答して下さい」と打ち込めば、temperature=表現のランダムさをゼロにすることにより、法律文書らしい遊びのない決定論的な文書が出力されやすくなるという。
前提さえ押さえれば、ChatGPTは法的リスクの当たりを付けたり、抜け漏れをチェックする、無給のパラリーガルとなり得ると期待している。
このほか、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士などに役立つプロンプトを公開している。社会保険労務士向けでは、従来1~2時間かかっていた、人事評価制度や求人票の作成が1~2分で終わるという。
◆複数人でディスカッションをする「壁打ち」作業のプロンプト
次に、業種別のプロンプトを紹介している。
銀行など金融機関でのChatGPT利用も進んでいるからだ。銀行の利用方法として多いのは、社内の資料や関連法令など指定の文書を読み込ませたうえで、特定の質問に答えさせるというものだ。社内での法令対応や、文書のコンプライアンスチェックに使える。
特集では、融資稟議書類を作成するプロンプトや、作成した融資稟議書をチェックするプロンプトを公開している。
コンサル向けには、一つの議題に関して、複数人が集まってディスカッションをする「壁打ち」作業のプロンプトを紹介している。
たとえば、ビジネスマン向けの軽量ノートパソコンのデザインに関して、プロダクトデザイナー、エンジニア、ユーザー、弁護士の立場からそれぞれ意見が出ている様子を見ると、異業種でも使えそうだ。
このほか、不動産、建設、商社、IT、広告、化学、教育、製薬、医師、薬剤師、公務員向けのプロンプトも。神奈川県横須賀市は4月からChatGPTを導入し、2万時間以上の時短に成功したという。
部署別では、営業、総務、経理、人事、法務向けのプロンプトを紹介している。この春、一大ブームとなったChatGPTは、さまざまな場面で活用され、使い方も進化していることがうかがえる。
弁護士、裁判官、検察官の「出世とお金」
「週刊東洋経済」(2023年9月9日号)の特集は、「弁護士裁判官検察官」。弁護士は「食えない」「AIが代替」と敬遠され、若手裁判官は続々と退官。冤罪続きの検察は信頼回復の糸口が見えない。揺らぐ文系エリートの今を追っている。
2015年に8015人だった司法試験の受験者数は、年を追うごとに減少。22年は3082人にまで落ち込んだ。今年は4165人と増加に転じたが、これはロースクール在学中でも受験できるようにしたからにすぎない。
「週刊ダイヤモンド」今号でも触れたが、8月1日に法務省が「非弁行為」のガイドラインを公表したため、弁護士のAI利用が加速しそうだという。
弁護士の日常業務で最も手間暇がかかるのが、判例や文献を調べるリサーチ業務。リサーチ業務から解放されれば弁護士はいよいよその真価が問われ、「食える」「食えない」の二極化が進むと予想している。
法科大学院(ロースクール)が開設されて20年。そのロースクールを柱とする法曹養成制度が岐路に立たされているという。合格率3%程度と超難関だった旧司法試験に対して、新司法試験は合格率45.5%(2022年)と半数近くが合格する試験となった。
ロースクールからの合格者が予想よりも少なかったため、ロースクールへの入学者が激減し、ピーク時の74校が34校と半減した。つまり、司法試験の受験者が激減したため、合格率が上昇したのだ。
一方で、ロースクールを経由しない予備試験制度が2011年に設けられた。予備試験合格者の司法試験合格率は昨年、97%台とロースクール修了生を圧倒。新たなエリートコースになっている。
◆文系エリートの代表と言われてきた法曹だが...
パート2では、不人気感が高まる裁判官の職場の実態を報告している。
裁判官は任官から10年間は判事補、つまり見習い裁判官として過ごし、11年目に判事になる。この任官10年前後の若手裁判官の退官が増え、新規の採用も大手法律事務所に負けて、現場の人手不足は深刻、という現役裁判官の声を紹介している。
2014年頃まで100人前後だった新規任官者数は、23年には75人にまで減っている。大都市の裁判官は、常時1人当たり単独事件を約200件、合議事件を約80件抱えているという。人手不足解消に向けて、最高裁は動くべきだと提言している。
パート3は検察官。大阪地検による不動産開発会社プレサンスコーポレーション役員への捜査、東京地検による大川原化工機への捜査と、このところ検察による冤罪事件が相次いでいる。前者でのストーリー優先の証拠集め、後者での公安警察のでっち上げを起訴したずさんな捜査を詳しくリポートしている。
弁護士、裁判官、検察官について、それぞれのパートで「出世とお金」について、まとめている。一時期、「弁護士は食えない」と言われたが、二極化したのが真相で、5大法律事務所のうち4社の1年目の年収は1200万円台で、これは検察官や裁判官になった修習生同期の2倍以上の高水準だという。
ともあれ、文系エリートの代表と言われてきた法曹の人気低下は、大学法学部の人気低下にもつながっているようだ。
新NISAで始める投信道場
「週刊エコノミスト」(2023年9月12日号)の特集は、「新NISAで始める投信道場」。いよいよ来年1月から始まる新NISA(少額投資非課税制度)を使った投資術をまとめている。
びとうファイナンシャルサービス投資運用アドバイザーの尾藤峰男氏は、世界最高の投資家ウォーレン・バフェットの投資哲学を紹介している。
「人生は雪だるまのようなものだ。大事なことは、ぬれた雪と本当に長い坂を見つけることだ」
NISAで複利効果を最大限発揮させるためには、ずっと持ち続けることが大事で、その観点からは、売らないで済む、世界株や日本、先進国、新興国などの株式に分散投資するインデックス投信や上場投資信託(ETF)を勧めている。
三菱UFJ国際投信が設定・運用する低コストのインデックスファンド「eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)」シリーズの設定額が急増しているという。
今年2月にシリーズのうちの「米国株式(S&P500)」ファンドの純資産残高が1兆8000億円を超え、国内公募株式投信で残高1位になったほか、7月にはシリーズ全体で純資産残高が5兆円を超えた。
最大の特徴は、他社の類似ファンドが同シリーズのファンドの信託報酬を下回った場合は、その類似ファンドに合わせて、機動的に信託報酬を引き下げることだ。信託報酬の低さは受益者に対する大きな付加価値となっている。自社でファンドを組成しているため、低コストなのも強みだという。
ニッセイ基礎研究所主任研究員の前山裕亮氏も、三菱UFJ国際投信が独り勝ちしている状態を認め、ブランド化でその牙城は揺るがないと見ている。
◆アプリ型金融の衝撃
第2特集の「埋込型金融の衝撃」も興味深かった。
銀行、証券、保険といった金融機能は、多様なサービスの中に組み込まれる「部品」となり、店舗やATM(現金自動受払機)が不要の新しい金融サービスが始まるという。
たとえば、無料通信アプリのLINEに組み込まれている「LINEポケットマネー」は、LINEクレジットが提供する個人向け無担保ローンサービスで、すべでがLINEアプリで完結する。
わずか3年半で貸付実行額が1000億円を突破。22年12月には単月の新規契約者数が2万5000人を超え、業界の大手各社を抜いた。
いまやさまざまな事業会社がこうした「ネオバンク」を展開、日本航空やヤマダデンキ、高島屋、NTTドコモなどが銀行業に参入。JR東日本も来春の参入を表明している。
アプリ型金融が既存の銀行の存在価値を揺るがそうとしている。(渡辺淳悦)