弁護士、裁判官、検察官の「出世とお金」
「週刊東洋経済」(2023年9月9日号)の特集は、「弁護士裁判官検察官」。弁護士は「食えない」「AIが代替」と敬遠され、若手裁判官は続々と退官。冤罪続きの検察は信頼回復の糸口が見えない。揺らぐ文系エリートの今を追っている。
2015年に8015人だった司法試験の受験者数は、年を追うごとに減少。22年は3082人にまで落ち込んだ。今年は4165人と増加に転じたが、これはロースクール在学中でも受験できるようにしたからにすぎない。
「週刊ダイヤモンド」今号でも触れたが、8月1日に法務省が「非弁行為」のガイドラインを公表したため、弁護士のAI利用が加速しそうだという。
弁護士の日常業務で最も手間暇がかかるのが、判例や文献を調べるリサーチ業務。リサーチ業務から解放されれば弁護士はいよいよその真価が問われ、「食える」「食えない」の二極化が進むと予想している。
法科大学院(ロースクール)が開設されて20年。そのロースクールを柱とする法曹養成制度が岐路に立たされているという。合格率3%程度と超難関だった旧司法試験に対して、新司法試験は合格率45.5%(2022年)と半数近くが合格する試験となった。
ロースクールからの合格者が予想よりも少なかったため、ロースクールへの入学者が激減し、ピーク時の74校が34校と半減した。つまり、司法試験の受験者が激減したため、合格率が上昇したのだ。
一方で、ロースクールを経由しない予備試験制度が2011年に設けられた。予備試験合格者の司法試験合格率は昨年、97%台とロースクール修了生を圧倒。新たなエリートコースになっている。
◆文系エリートの代表と言われてきた法曹だが...
パート2では、不人気感が高まる裁判官の職場の実態を報告している。
裁判官は任官から10年間は判事補、つまり見習い裁判官として過ごし、11年目に判事になる。この任官10年前後の若手裁判官の退官が増え、新規の採用も大手法律事務所に負けて、現場の人手不足は深刻、という現役裁判官の声を紹介している。
2014年頃まで100人前後だった新規任官者数は、23年には75人にまで減っている。大都市の裁判官は、常時1人当たり単独事件を約200件、合議事件を約80件抱えているという。人手不足解消に向けて、最高裁は動くべきだと提言している。
パート3は検察官。大阪地検による不動産開発会社プレサンスコーポレーション役員への捜査、東京地検による大川原化工機への捜査と、このところ検察による冤罪事件が相次いでいる。前者でのストーリー優先の証拠集め、後者での公安警察のでっち上げを起訴したずさんな捜査を詳しくリポートしている。
弁護士、裁判官、検察官について、それぞれのパートで「出世とお金」について、まとめている。一時期、「弁護士は食えない」と言われたが、二極化したのが真相で、5大法律事務所のうち4社の1年目の年収は1200万円台で、これは検察官や裁判官になった修習生同期の2倍以上の高水準だという。
ともあれ、文系エリートの代表と言われてきた法曹の人気低下は、大学法学部の人気低下にもつながっているようだ。