投資ファンドが出資する企業の法的整理が目立ってきた。
コロナ禍以降、経済が正常化する中で業績が回復する企業がある一方、ビジネスモデルや事業・収益計画の修正を余儀なくされている企業は少なくない。
企業信用調査の帝国データバンクによると、投資ファンドが出資する企業の倒産は、2023年1~7月で34件。「通年では過去10年で最多となる可能性がある」とみている。
投資ファンドが、事業の将来性や収益拡大を見込んで資金を投入してきた企業の中で明暗が分かれているようだ。
過去最多の2014年を大幅に上回る予測
帝国データバンクが2023年8月30日に発表した「特別企画:ファンド出資企業の倒産動向調査 2023」によると、今年1~7月に投資ファンドが出資した企業の倒産は、34 件にのぼることがわかった。
帝国データバンクは、「通年では58件前後となる可能性があり、過去最多の2014年(39件)を大幅に上回る予測だ」としている。
ちなみに、各年の1~7月で比べても、14年の25件を大きく上回り、過去最多だった。
一方、23年1~7月の負債総額は3976億円。過去10年間のピークは、自動車部品大手のマレリホールディングス(投資ファンドはKKR CKInvestment L.P.、負債総額1兆1856億円)の倒産があった昨年(22年)の1兆2014億円だが、7月時点でそれに次ぐ負債総額となっている。【図1、図2参照】
投資ファンドが出資する企業の倒産が大型化した背景として、コロナ禍での業績悪化などを受けて、携帯端末・情報処理などのFCNTや外食チェーンのダイナミクスなどの大きな企業でも、当初計画の実現や追加資金の投下が困難と判断される動きが進んだことがあるとみられる。
倒産件数全体に占める投資ファンドが出資した企業の割合は、おおむね0.3%前後で推移していたが、2023年1~7月は0.7%と、過去10年で最も高い。負債総額でみても、23年1~7月はマレリHDの倒産があった22年(50.6%)に次いで2番目の36.6%となった。23年1~7月の負債総額は、通年と同じく22年に次ぐ過去2番目の水準だった。
投資ファンドの出資企業、「サービス業」の倒産が最多
投資ファンドが出資する企業の法的整理を倒産態様別でみると、最も多いのは「破産」の23件で、全体の67.6%を占めた。「特別清算」(3件)と合わせると、清算型の法的整理は76.4%にのぼる。過去10年の累計と比べると、「破産」の割合が高くなっていることがわかる。【図3参照】
一方で、倒産全体における「清算型」の割合は2023年上半期で96.9%で、投資ファンドの出資企業の倒産(76.4%)はこれを大きく下回っており、事業譲渡などのスキームが可能な「再生型」が多いことがわかった。
また、業種別でみると、コロナ禍での業績悪化が顕著な「小売業(飲食店を含む)」が目立った。最も多いのは「サービス業」の11件で、全体の32.4%を占めた。次いで「小売業」と「卸売業」がともに6件、全体の17.6%で並んだ。「製造業」は5件で14.7%だった。【図4参照】
ただ、コロナ禍でダメージを受けた事業者でも、飲食店グループのOUNH(旧TBI ホールディングス)のように、ファンドからファンドへ事業譲渡されたのちに、金融債務だけ残した旧会社を法的整理するケースもある。
法的整理を利用した債務カットを前提とすることで、アフターコロナでの事業価値をファンドが評価し、事業が存続するという事例だ。
過去10年の投資ファンドの出資企業の倒産を業種別にみると、最も多いのは「サービス業」の89件で全体の34.5%にのぼった。次いで、「製造業」の51件で全体の19.8%、「卸売業」の49件、19.0%と続いた。倒産全体では2割前後を占める「建設業」は、11件で全体の4.3%にとどまった。
なお、調査は2023年および過去10年間(2014年以降)における、投資ファンドが出資する企業の倒産動向について集計・分析した。
投資ファンドの出資企業の倒産は、企業倒産(法的整理)のうち、倒産時点もしくはそれ以前のおおむね5年間で、投資ファンドなどの出資が確認できたものを取り上げた。
また、中核企業や持ち株会社に出資し、その企業も含めグループで複数が倒産した場合など、実質的に投資ファンドが出資したと判断できるものは、直接出資がなくてもカウントしている。
このテーマでの調査は初めて。