なぜ花火の色はカラフルなのか? 「原理がわかる手持ち花火」開発者は、国産ロケット「H2」も手掛けた火薬研究のスペシャリストだった!【前編】/グリーン・パイロラント社長・松永猛裕さん

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「花火をサイエンスとして見ている子供たちはほとんどいない」 新商品開発のきっかけに


子供たちの花火に対する認識への気づきから、新商品は生まれたという

――松永様にはそうしたバックグラウンドがあったのですね。では、「花火の原理がわかる手持ち花火I 色火剤」の着想から開発に至るまでのエピソードをお教えください。

松永氏 さきほどお話ししたような研究をしているうちに、ロケットの火薬作りの技術を元にした花火を作ることに成功し、特許を取得しました。その後、産総研の一般公開のイベントで中高生に対して、「あっという間に作れる花火」といったコンセプトで花火作りを実演するようになりました。そんな中で、花火の原理を中高生に説明していこうと思うようになったのです。

――と、いいますと?

松永氏 なぜならば、花火をサイエンスとして見ている子供たちはほとんどいないからです。花火の色を出す元素(銅など)の炎色反応については学校の授業ではやりますが、これが花火にどのように応用されているかを知っている中高生は本当に少ないのが実情です。

――正直、仕組みについては私もわかりません...。

松永氏 なので、産総研の一般公開イベントでは花火の発色の仕組みについて教えるようにしてきたのですが、イベントは年に1回。しかも招かれるのは5、6人。これでは花火の詳細な仕組みを知らない中高生のうち、一握りにもならない人数にしか教えることができません。そこで、「花火の原理が分かる手持ち花火を作ってしまえ!」と思い立ち、「花火の原理がわかる手持ち花火I 色火剤」を開発するに至りました。

――そういうことだったんですね! ちなみに、花火の火薬に混ぜる色を出すための薬剤にはどんなものがあるんでしょうか。

松永氏 元素名で言うと、ストロンチウム、銅、バリウム、ナトリウムです。これらの塩(※えん=塩化物イオンといったマイナスイオンとの化合物)を火薬に混ぜると花火に色が付きます。それぞれ、赤、青、緑、黄の色が出るのですが、これらを組み合わせることでピンクなどの中間色も出せるのです。

   <なぜ花火の色はカラフルなのか? 「原理がわかる手持ち花火」開発者は、国産ロケット「H2」も手掛けた火薬研究のスペシャリストだった!【後編】/グリーン・パイロラント社長・松永猛裕さん>に続きます。

(聞き手・構成/J-CAST会社ウォッチ編集部 坂下朋永)



【プロフィール】
松永 猛裕(まつなが・たけひろ)


株式会社グリーン・パイロラント
代表取締役社長
1960年、静岡県浜松市生まれ。光化学スモッグの研究を目指して東京大学工学部反応化学科に入学するも、火薬をはじめとする爆発の研究に携わることに。1988年に通産省工業技術院化学技術研究所(現在の産業技術総合研究所)入所。同研究所に勤務しつつ、2011年に株式会社グリーン・パイロラント設立。2020年に産総研を定年退官。

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