FRBがソフトランディングに自信を見せる理由は?
一方、3か月ぶりに上昇に転じた失業率をどう見るのか。
ニッセイ基礎研究所主任研究員の窪谷浩氏は、リポート「米雇用統計(23年8月)-失業率は3か月ぶりに上昇、賃金上昇圧力は緩和」(9月4日付)のなかで、第一生命経済研究所の藤代氏と同じく「ソフトランディングが見えてきた」としてこう説明する。
「失業率は3か月ぶりに上昇に転じたが、労働参加率の上昇にみられるように、職探しを再開して労働市場に再参入する人が大幅に増加した結果であり、労働供給の回復を反映している。このため、8月は労働供給の回復に伴い労働需給が緩和したことが示唆される」
米国ではコロナ禍の期間、50代以上の労働者がいわゆる「コロナ手当」をもらって大量に早期退職したため、深刻な人出不足に見舞われた。それが、現在の賃金インフレの主因になっているが、今回、プレイムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)の労働参加率が83.5%と、2002年以来の水準に上昇した【図表2】。
そのため失業率が上昇したが、それでも過去最低水準を維持している。というわけで、窪谷氏はこう指摘するのだ。
「このように、労働供給の回復、賃金上昇率の低下など、労働需給の緩和に伴う賃金上昇の伸び鈍化を確認する内容となっており、米国経済のソフトランディングを目指すFRBにとって良好な結果と言えよう」