緩やかに増える雇用者、小幅な上昇の失業率...米国は「適温経済」
今回の8月雇用統計の結果をエコノミストはどうみているのだろうか。
いよいよ米経済の「ソフトランディングング」(軟着陸)が見えてきたと歓迎するのは、第一生命経済研究所主席エコノミストの藤代宏一氏だ。
藤代氏はリポート「経済の舞台裏:適温の雇用統計 9月FOMCは様子見へ」(9月4日付)のなかで、米雇用者数の推移のグラフ【図表1】を示しながらこう指摘する。
「Fed(米連邦準備制度)の利上げ終了時期を予想するうえで、重要な判断材料となる8月米雇用統計は『適温』であった。緩やかに増加する雇用者数、小幅に上昇する失業率、下向きの曲線を描く平均時給、はっきりと上昇した労働参加率。ソフトランディングを『緩やかな景気減速とインフレ沈静化』と定義するならば、8月雇用統計はそれに合致する結果であり、今回の結果はFedに利上げ終了を促したと判断される」
そう明るい見通しを示した。
また、製造業の好景気・不景気を判断する8月ISM製造業景況指数も、同じく8月31日に発表された。こちらも、好不景気の分かれ目である「50」を下回ったものの、47.6へと前月より1.2ポイント改善し、底打ち感を強めた。
つまり、減速していた製造業がやや持ち直しており、ソフトランディングの可能性を高めているというわけだ。
こうした結果から藤代氏はこう結んでいる。
「(製造業の)1~3か月先の生産を読むうえで、有用な新規受注・在庫バランスは改善傾向を強め、生産活動の持ち直し持続を示唆。景気後退の回避をより明確に印象付けるという視点において安心感のある結果であった」