マツダとホンダが2023年11~12月、メーカー主催のファンイベントをそれぞれ開く。いずれもサーキットでモータースポーツの楽しさなどを伝える内容で、文字通り「ファン参加型」となっているのが特徴だ。両社は22年11月にも同様のイベントを開いているが、23年の見どころは何だろうか。
ル・マン100周年イベントでも話題に...日本初の総合優勝の名車「マツダ787B」登場!
マツダは2023年11月4~5日、岡山県の「岡山国際サーキット」で、「MAZDA FAN FESTA 2023 IN OKAYAMA(マツダ・ファン・フェスタ2023イン・岡山)」を開催する。9月4日から入場券などを販売する。
テーマは「共に走る歓びを」。マツダが誇る往年のレーシングカー「マツダ787B」がデモンストレーション走行を行う。787Bはフランスの「ル・マン24時間耐久レース」で1991年、日本メーカー初の総合優勝を果たした名車で、デモ走行はファン・フェスタの名物となっている。
23年6月にフランス・サルトサーキットでおこなわれたル・マン開催100周年の記念イベントでは、招待を受けたマツダのレジェンドレーシングドライバー寺田陽次郎氏が787Bでデモ走行している。
マツダは今回のファン・フェスタのデモ走行ドライバーを公表していないが、寺田氏が登場するのは間違いないだろう。寺田氏と787Bの組み合わせとなったら、往年のファンには堪えられないものだ。
一方、ファン参加型のモータースポーツとしては、「ロードスター・パーティレース」のほか、「マツダファン・サーキットトライアル」「マツダファン・エンデュランス(マツ耐)」などを行う。
ロードスター・パーティレースは、ロードスター・オーナーによるワンメイク(単一車種)レースだ。マツダファン・サーキットトライアルは、マツダ車であれば誰でも参加できるタイムトライアル。マツ耐は「2時間半、給油なしでいかに長い距離を走れるか」を競うもので、マツダ車であればノーマルカーでもチューニングカーでも参加できる。
今回は新たに、レーシングコースをバスに乗車して体験する「レーシングコースバスツアー」を開催する。このほか、マツダの開発エンジニアからマシンの開発秘話などを聞く交流イベントもある。
ホンダ、MotoGPやF1で活躍する選手&マシンが集結 前回は、フェルスタッペン選手、角田裕毅選手の参加で盛り上がり
ホンダは12月3日、栃木県の「モビリティリゾートもてぎ」で「Honda Racing THANKS DAY(ホンダ・レーシング サンクスデー)2023」を開催する。
ホンダが2005年から開催する伝統のファンイベントで、3年ぶりのリアル開催となった2022年に続き、今回も現地でさまざまな催しを予定している。
「MotoGP(ロードレース世界選手権)やF1(フォーミュラ・ワン世界選手権)をはじめとする国内外の二輪・四輪さまざまなレースカテゴリーの選手とレーシングマシンが集結し、デモ走行やホンダならではの多彩なコンテンツを用意している」
ホンダはそうコメントしている。
22年はホンダがエンジンを供給するF1チームのマックス・フェルスタッペン選手や日本人唯一の参戦ドライバー、角田裕毅選手らが参加した。
ホンダは「今年もF1ドライバーが出演する予定だ。出演するドライバーやライダーはじめ、イベント内容はホームページで順次公開する」という。
会場に制約があり、毎年の開催が難しいケースも ホンダ、マツダの毎年開催は際立つ
日本の自動車メーカー主催のファンイベントは、トヨタ自動車や日産自動車も開いているが、コロナ禍で中止に追い込まれるなど影響を受けた。そんな中、家族で参加できるイベントを復活させ、毎年開催するメーカーは珍しい。
ホンダは2005年の初回から、コロナ禍の中断を含み、今回で15回目の開催となる。マツダは22年まで西日本の岡山国際サーキットが中心だったが、23年9月には2018年以来、5年ぶりに東日本の富士スピードウェイ(静岡県)でも行い、11月の岡山と合わせ、1年に東西で開催することになる。
実は、自動車メーカーがファンイベントを開催するのは、意外と煩雑らしい。
ホンダと並び、熱烈なファンの多いSUBARU(スバル)でさえも「ファンをつなぎとめるため、本当は毎年イベントを開催したいが、会場など制約が多く、毎年は難しい」と筆者は幹部から聞いたことがある。
トヨタやホンダなど自前のサーキットを持つメーカーは開催するのが比較的簡単かもしれない。だが、サーキットを持たないマツダ、スバルなどは自社のテストコースをファンに開放して行ったこともある。ただ、熱心なファンに「聖地巡礼」は喜ばれるかもしれないが、企業秘密の多いテストコースを毎回開放するのはさすがに難しいようだ。
結果的に近年、メーカー主催のファンイベントの開催が限られる中、マツダとホンダの意欲的な開催はファンとメーカーの絆の表れであり、特筆に値する。(ジャーナリスト 岩城諒)