EV普及による業績への影響は? 「プラスの影響」11.1%、「マイナスの影響」13.6%、「影響はない」41.0% 帝国データバンク

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   帝国データバンク(東京都千代田区)は2023年8月28日に「特別企画 EV普及の影響/参入企業の実態調査(2023年)」を発表した。

   調査によると、EVの普及による業績の影響について、「プラスの影響」と答えた企業は11.1%、「マイナスの影響」では13.6%となった。「影響はない」は41.0%、「分からない」は34.3%で、これらをあわせた75.3%の企業は実感に乏しいといえるかもしれない。

   従業員数別に見た場合、「プラスの影響」については、「5人以下」では7.5%、「301~1000人」では21.3%、「1000人超」では28.5%と、企業の規模が大きくなるにつれて「プラスの影響」への割合が高まる傾向が明らかになっている。

  • EVの普及、企業への影響は?(写真はイメージです)
    EVの普及、企業への影響は?(写真はイメージです)
  • EVの普及、企業への影響は?(写真はイメージです)

従業員数の多い大企業ほどプラスの影響が大きい傾向

(帝国データバンクの作成)
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   はじめにEVの普及による業績への影響を聞いたところ、最多は「影響はない」で「41.0%」、次いで「分からない」が「34.3%」、「マイナスの影響」は「13.6%」、「プラスの影響」は「11.1%」となった。

   同社によると、企業からは「時代の流れについていくが...まだ情報収集の段階」「同業他社の動向をみている」との意見が上がったという。

(帝国データバンクの作成)
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(帝国データバンクの作成)
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   続いて、EVの普及による業績への影響を会社規模別で見ると、「プラスの影響がある」としたのは「中小企業」が「10.1%」だったのに対して、「大企業」では「16.3%」と6.2ポイントの差が開いた。

   一方で、「マイナスの影響がある」としたのは「中小企業」で「13.7%」、「大企業」で「13.6%」となり同程度となった。なお、「影響はない」と「分からない」はどちらも、わずかながら「中小企業」が「大企業」を上回った。

   また、従業員数別でみると、従業員数「5人以下」では「プラスの影響」は7.5%となった。「301~1000人」では「21.3%」、「1000人超」では「28.5%」にまで達した。

   同社は「『5人以下』から『101~300人』までは『マイナスの影響』が『プラスの影響』を上回ったが、『301~1000人』からは逆転し、従業員数の多い大企業ほどプラスの影響が大きい傾向がみられた」としている。

「マイナスの影響」大きい地域は「東海」20.6%...ほかの地域よりも突出

(帝国データバンクの作成)
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   EVの普及による業績への影響について、地域別でみた場合はどうか。「プラスの影響」が最も高いのが「北関東」の「13.8%」、次いで「南関東」の「12.4%」、「北陸」の「12.2%」、「四国」の「12.1%」となった。

   一方で、「マイナスの影響」が大きいのは「東海」で20.6%とほかの地域よりも突出している。これについて帝国データバンクは、「内燃機関を動力源とする既存の自動車産業は裾野が広く、関連企業が多数存在するが、その中心地である『東海』地域への影響は大きい」と指摘する。

(帝国データバンクの作成)
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   さらに、EV事業への参入予定を聞いた。それによると、「3年以上前から該当する事業あり」が「3.4%」、「3年以内に新規事業として参入済み」が「1.3%」、「参入予定あり」が「5.3%」となり、「参入予定なし」は「67.4%」、「分からない」も「22.6%」となった。

(帝国データバンクの作成)
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   EV事業への参入について、企業の規模別にみると、中小企業では「参入済みもしくは参入予定」は「9.1%」、「大企業」の「参入済みもしくは参入予定」は「15.0%」となり、大企業のほうが4.9ポイント高い。

   帝国データバンクは、こう指摘する

「企業からは、『いまは業界環境が一変する過渡期』との声があり、充電インフラの設備工事に商機を見出している事例が多く聞かれたほか、車両や電池に関わる様々な部材、センサーなどの開発、製造も多くの企業が手がけ始めている。また、ワイヤレス給電や水素エネルギーなど、先端分野の研究・開発を行っている事例もあった」
(帝国データバンクの作成)
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   最後に、EV事業への参入を業界別にみると、「参入済みもしくは参入予定」が最も高いのは「製造」の14.0%。次いで「小売」の13.5%、「卸売」と「建設」の9.4%、「運輸・倉庫」の8.4%、「サービス」の7.0%、「金融」の6.6%、「不動産」の4.6%、「農・林・水産」の2.8%と続いた。

「これを細かな業種でみると、第1位は『自動車・同部品小売』の56.0%。この業種に属する過半の企業が『参入済みもしくは参入予定』となった。第2位は自動車・自動車部品の『輸送用機械・器具製造』が34.3%で続いた」(帝国データバンク)

   今回の調査結果を受け、帝国データバンクでは以下のように総括している。

「トヨタは2030年にEV350万台の世界販売目標を定めており、日産は2030年までに電動車27車種(うちEV19車種)を投入、電動車の車種構成を55%に高める。ホンダは2030年に電動車200万台、2040年までにすべての新車販売を電動車とする方針だ。こうしたEVシフトの波に乗るか傍観するか、経営判断の分かれるところだが、EVが主流となり、一定の市場シェアを占めるに至った場合、待っているのは内燃機関の需要減少とそこへの依存度の高い企業の淘汰だ」「EVシフトの行方は見通せないが、世界的な脱炭素の潮流の中で自動車産業も製造からインフラ整備まで大きな転換期を迎えていることは間違いないだろう」

   なお、今回の調査は2023年7月18~31日、全国2万7768社を対象とした。有効回答企業数は1万1265社(回答率40.6%)。EVに関する調査は、2021年6月、2022年7月に続いて今回で3回目。

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