情動のパニックを避けるには「6秒」必要!【尾藤克之のオススメ】

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   アップルの創業者、故スティーブ・ジョブズをはじめ、世界のビジネスリーダーたちも学んでいる禅(ぜん)の教えは、いまや世界標準の教養のひとつ。禅の教えを知ることで、不安・イライラ・マイナス思考などを子どもたち自身でコントロールし、なにが起きてもすぐ平常心を取り戻せるしなやかな心を育めるというものです。

『1日3分でしなやかな心が育つ 禅のことば』(大愚元勝 監修)講談社

怒りや悲しみなど、感情の動きをストップさせるには?

   「禅」は仏教のことばで、解釈がされています。本書では、「止観」という考え方を意識した構成に仕上がっています。「止」は心を乱さず、特定の対象に注ぐこと。「観」は止によって正しい知恵を起こし、観察することを意味します。

「たとえば、あなたがあとで食べようと冷蔵庫にしまっていた特製アイスクリームを同僚が食べてしまったとします。しかも自分専用で『食べないでくれ』という付箋まで貼っていました。気が付いたあなたは怒ったり、悲しくなると思います」(大愚さん)
「禅では、まずこうした怒りや悲しみなどの感情の動きをストップさせます。どうやるのかというと、『あ、いま自分は怒っているな』と、まるで映画を見ているような感じで、自分の感情をながめるのです。これができると、だんだん自分の感情のゆれ動きがおさまってきます。感情のゆれ動きがおさまると、クールに考えられます」(同)

   じつはこの考え方は、学説的にも正しいといえそうです。私はかつて、EQ(Emotional Intelligence Quotient=感情知能)を専門的に研究する組織(EQ JAPAN)に所属していました。EQ理論提唱者と共同研究をしていた世界唯一の研究機関になります。ディレクターとして私は、営業、ソリューション、プロファイラーなどを統括するミッションを遂行していました。ここでは、EQの専門家として、「EQ理論」のシックスセカンズという手法を紹介したいと思います。

   怒りは誰もが持っている感情です。怒りの感情は6秒をピークに、あとは下降するといわれています。もし、頭に血がのぼるようなできごとにあったら、「6秒ルール」を試してみればいいのです。すなわち、怒りにすぐ反応せず、6秒待つということです。

   私たちが怒っているとき、脳の情動を司る大脳辺縁系が活発に働いています。動きが活発になると、アドレナリンが分泌され緊張した状態が生まれます。強い怒りに振り回されていると、冷静な判断力が低下し衝動的な言動を取りやすくなります。しばらくすると、前頭葉が働いてブレーキをかけようとします。この時間が6秒程度なのです。

日々是好日:どんな日もいい日だ どんな出来事も「受け止め方ひとつ」

   日々是好日――。これは、中国の唐の時代にいた、雲門文というお坊さんの言葉です。ある日、雲門は弟子たちに「これから15日以降の日々の心境を述べなさい」といいました。でも、なにが起こるかわからない未来の気持ちなんてわかるわけがないので、弟子たちは答えられません。

   雲門は自分で「日日是好日」と答えました。なぜ、雲門はこんなことを言ったのでしょうか。たとえば学校に行く途中、スマホを片手に歩いていて水たまりで転んでしまったとします。「最悪な日だ!」と思うかもしれません。しかし、転んだおかげで「歩きながらスマホをいじるのはやめよう」と考えるようになるでしょう。

   そのような行動は、結果的に事故を未然に防ぐことになります。このように、すべて私たちの出来事は受け止め方ひとつで、「いいこと」に変えられるのです。それを言いたかったのだと、大愚さんは指摘します。

「この世には『いい出来事』も『悪い出来事』もないと考えます。『いい』『悪い』は私たちの心がつくっているだけで、それにとらわれすぎてはいけないのです」(大愚さん)

   1500年以上の歴史を持つ仏教の宗派のひとつ「禅宗」には、子どもたちの考える力・感じる力を刺激する禅語がたくさんあります。

   本書では子どもたちに知ってほしい禅語を簡潔に解説しており、ユーモラスなイラストも入れて、仕上げています。子供向けの本ですが、大人が読んでも充分楽しめるはずです。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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