中国の成長率が2%下振れると、日本の成長率はゼロに
さて、中国経済が落ち込んでいけば、日本経済はどうなるのか。
日本の経済成長率もゼロになってしまうリスクがある、と指摘するのは野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「『日本化』に向かう中国経済が日本経済の大きなリスクに:中国の成長率2%下振れで日本の成長率は1.3%下振れ」(8月30日付)のなかで、中国での成長率の下振れは一時的な現象ではなく、バブル崩壊後の日本経済のように、長期的な低迷に陥る「日本化」のリスクがあると述べた【図表4】。
そのうえで、仮に中国経済の成長率が今後2%下振れると、日本経済がゼロ成長になる根拠をこう説明した。ポイントは、こうだ。
(1)国際通貨基金(IMF)によると、中国の成長率が1%ポイント低下すると、世界の成長率は約0.3%低下する。
(2)内閣府「世界経済の潮流(2013年II)」では、中国のGDPが1%変化すると、日本を含む主要5か国の成長率は約0.5%変化すると試算されている。ただし、2012年時点のデータに基づく試算であり、現在の中国経済の規模拡大を考慮すれば日本への影響はもっと大きい。
(3)IMFによると、中国のGDPが世界のGDPに占める比率は2012年の11.1%から2022年には18.1%へと1.6倍以上に高まった。この点を考慮すると、現時点で中国の成長率が1%下振れると、日本の成長率は0.65%下振れる計算となる。
(4)政府は2023年度の日本の実質成長率をプラス1.3%としているが、中国の成長率の前提が2%下振れると、「0.65%×2倍=1.3%」で、ちょうどゼロ成長となってしまう計算だ。そのくらい、中国経済の下振れが日本経済に与える打撃は大きい。
木内氏はこう結んでいる。
「一方で、資源国の経済には先進国以上に大きな打撃を与えることになる。既述の内閣府の分析でも、中国の成長率の下振れの影響は、資源国では先進国の2倍である。中国経済の下振れは、資源大国であるロシア経済にも大きな打撃となり、ウクライナ紛争の行方にまで影響してくるかもしれない」
(福田和郎)