都市ごとにバラバラの不動産政策、不況の深刻さもマチマチ
こうした事態をエコノミストとはどう見ているのか。
日本銀行国際局の阿由葉舞、川上淳史、神保真宏、松永美幸、平田渉氏ら5人による経済リポート「日銀レビュー:中国の不動産市場を巡る動向」(8月31日付)によると、中国経済にとって不動産市場の動向は極めて重要だという。
同リポートによると、たとえば、不動産関連産業のGDP(国内総生産)シェアは、波及効果が及ぶ関連サービスも含めると、26%(2019年)まで高まるとの試算がある。
また、土地が公有の中国では、土地の使用権払い下げの権限が地方政府にある。不動産価格が高騰した結果、財政面では、不動産開発に伴う土地の払い下げ収入が、地方政府の財源の約3割を占めるほどになった(2021年)。
2020年、中央政府が規制を強めた結果、不動産価格が下落した。【図表1】は、中国における「1線級都市」と「2線級都市」、「3線級都市」の都市の規模別住宅需給の推移だ。
これを見ると、「3線級」や「2線級」など、都市の規模が小さいところほど、住宅価格が大きく上昇する見込んだ不動産業者が開発を加速させた結果、一気に不動産価格が下落したことがわかる。
このように地方政府(都市)の間で、不動産市場の管理政策の方向性に大きなバラツキがあることが、問題を複雑にしている。リポートはこう指摘する。
「特に、3線級以下の都市では、大きな調整圧力を抱えており、不動産市場の持ち直しの動きに対して重石として作用していくとみられる」
リポートがもう1つ指摘するのは、中長期的な視点でみると、中国は人口減少に直面しており、住宅を購入する主な年齢層の人口割合が低下し始めていることだ【図表2】。しかも、グラフを見ると、日本の住宅購入層の人口の減り方より、中国のほうが減り方は甚だしい。
「(経済が低迷し始めた)1990年代のわが国の経験に鑑みると、人口動態は都市規模間の人口増減の格差をさらに拡大する方向で変化する可能性が高く、地域ごとの住宅の需給ミスマッチへの対処がより重要となっていく。
不動産企業の債務抑制と経済成長を両立しつつ、都市レベルの不動産需給を如何にして調和させていくかが重要であり、今後の政府による対応策に注目していく必要があると考えられる」
1線級から3線級まで、地方政府の規模レベルで不動産不況の状態が違う中、長年中国経済を支えてきた不動産の購入層がどんどん減り始めているわけだ。中央政府は難しい舵取りを迫られているわけだ。