最低賃金の引き上げ効果も限定的 「年収の壁」問題への対策も「不透明」
最低賃金の引き上げの効果も限定的とみられる。23年度の最低賃金(時給)は全国加重平均で41円(4.3%)引き上げて1002円とすることが決まり、10月ごろから適用される見通しだが、物価が高止まりする中では実感は薄れる。
とくにパート労働者の年収が106万円を超えると、社会保険料の負担が生じて手取りが減るという「年収の壁」があるため、時給が上がってもこの壁を超えないよう就業時間を調整する(減らす)人もおり、実質の収入が増えない。
政府は年収の壁を超えても手取りが減らないよう対策を講じる方針だが、実効性は不透明だ。
労務費も含めた価格転嫁が進む環境を政府が整え、企業は生産性を向上させ、24年以降の賃上げ期待を高めていくことが、実質賃金をプラスに転換させるポイントになる。(ジャーナリスト 白井俊郎)