関東大震災から100年 8割超の人が「5年以内に大きな地震に遭う」と思っている

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   9月1日は「防災の日」。1923(大正12)年この日、東京をはじめ、南関東一帯をマグニチュード7規模の地震が発生。推定で190万人が被災、10万5000人あまりが死亡あるいは行方不明になったとされる関東大震災から、100年が経った。

   2011(平成23)年3月11日には東日本大震災が発生。それ以降、中信越、北海道、熊本などの全国で震度5超の大規模な地震がたびたび起こっており、地震への警戒心は高まっている。

   そうしたなか、一条工務店(東京都江東区)の「防災に関する意識調査 2023」によると、「8割以上の人が、ここ10年で地震に対する意識が強まった」と回答。「半数以上の人が自宅に防災セットを用意している」と答えていた。2023年8月24日の発表。

8割超の人が「ここ10年で地震に対する意識が高まった」と回答

   調査によると、全国の男女を対象(n=914)に、「身近で発生するリスクがあると感じる災害は何ですか?」(複数回答)と聞いたところ、「地震」と答えた人が84.2%と、8割を超えてトップだった。次いで、54.8%の人が「台風」と回答。50.9%が「豪雨」、37.3%が「火災」、32.7%の「河川の氾濫」が続いた。【図1参照】

図1 身近で発生するリスクがあると感じる災害の第1位は「地震」(一条工務店調べ)
図1 身近で発生するリスクがあると感じる災害の第1位は「地震」(一条工務店調べ)

   また、「5年以内に自分自身が大きな地震に遭う可能性があると思いますか」との問いには、「とてもそう思う」と答えた人が25.9%、「ややそう思う」が54.5%を占め、合わせて80.4%の人が「5年以内に自分自身が大きな地震に遭うと思っている」ことがわかった。 「そう思わない」と答えた人は3.0%、「あまりそう思わない」は16.6%だった。【図2参照】

図2 「5年以内に自分自身が大きな地震に遭う」と思っている人は約8割(一条工務店調べ)
図2 「5年以内に自分自身が大きな地震に遭う」と思っている人は約8割(一条工務店調べ)

   さらに、「ここ10年で地震に対する意識は、どのように変化しましたか」と聞いたところ、47.8%の人が「やや強まっている」と回答。「強まっている」(34.4%)と答えた人と合わせると、8割以上(82.2%)の人が「ここ10年で地震に対する意識が強まった」ことがわかった。

   地震に対する意識が「弱まっている」と答えた人は、わずかに0.3%。「やや弱まっている」は0.5%だった。「変わらない」と答えた人は17.0%だった。【図3参照】

図3 「ここ10年で地震に対する意識が強まった」と答えた人は8割超(一条工務店調べ)
図3 「ここ10年で地震に対する意識が強まった」と答えた人は8割超(一条工務店調べ)

防災セットの入れ替えは「半年~1年に1回」

   大地震への「備え」はどうか――。

   調査で、「自宅に食料や飲料水、衛生用品などの防災セットを用意していますか」との問いに、半数以上の54.5%人が「用意している」と答えていたことがわかった。「用意していない」人は45.5%だった。【図4参照】

   また、「用意している」と答えた人(n=498)に、「防災セットの点検や入れ替えを、どのくらいの頻度でしていますか」と聞いたところ、「半年~1年に1回」の頻度で点検や入れ替えをしていると答えた人が57.5%(「半年に1回」17.7%と「1年に1回」39.8%の合計)にのぼることがわかった。

   その一方で、「2~3年に1回」と答えた人が30.7%、「4~5年に1回」が5.8%だった。「5年以上していない」という人も6.0%いた。1割強は、4年以上点検や入れ替えをしていないという。【図5参照】

図4・図5 半数以上の人が自宅に食料や飲料水、衛生用品などの防災セットを用意(一条工務店調べ)
図4・図5 半数以上の人が自宅に食料や飲料水、衛生用品などの防災セットを用意(一条工務店調べ)

   調査では、住まいについても聞いた(n=914)。「もし震度7の地震が起こったら、現在の住まいになんらかの被害があると思いますか」の問いに、「全壊すると思う」と答えた人は17.0%、「半壊すると思う」が27.7%、「一部損壊すると思う」が47.7%と、合わせて92.4%の人が「なんらかの被害がある」と思っていることがわかった。【図6参照】

図6 もし震度7の地震が起こったら、現在の住まいに「なんらかの被害があると思っている」人は9割以上(一条工務店調べ)
図6 もし震度7の地震が起こったら、現在の住まいに「なんらかの被害があると思っている」人は9割以上(一条工務店調べ)

   さらに、築年数別に聞いたところ、「築31年以上」の家に住んでいる人の34.6%が「全壊すると思う」と回答。「半壊すると思う」と答えた人は31.8%もいた。その一方で、築年数が「5年以下」でも、85.1%(「全壊すると思う」と答えた人は8.7%と「半壊すると思う」22.1%、「一部損壊すると思う」55.3%の合計)もの人が、住まいがなんらかの損壊を受けると心配していることがわかった。【図7参照】

図7 「築31年以上」の家に住んでいる人の34.6%が「全壊すると思う」と回答(一条工務店調べ)
図7 「築31年以上」の家に住んでいる人の34.6%が「全壊すると思う」と回答(一条工務店調べ)

   こうした調査結果に、国際災害レスキューナースで一般社団法人 育母塾代表理事の辻直美さんは、

「近年、大きな地震が頻発していることを受けて、自宅がなんらかの被災にあう可能性があると感じているなど、地震が身近に感じている人が多くいることが明確になりました。しかし、防災セットを用意しているかというと半数になり、そのうち半年から一年での点検が6割と、かなり少なくなります。危機感があるのに実際に準備をしているのが半数というのはかなり問題です。
被災したら助かることが第一目標です。しかし、次はそこから生き抜いて、元の生活に戻ることが必要です。被災から復興へスイッチするには、最低でも防災セットの充実は必須です」

   とコメントを寄せている。

多発する「水害」被害 避難指示が出ても「避難しない人」8割

   一方では近年、台風の大型化や線状降水帯の発生による大雨、ゲリラ豪雨による浸水や土砂災害が多発しており、少なくない人が被害に遭っている。 ところが、台風・豪雨時に地域で避難指示が出た場合、「速やかに避難をしない」人は8割以上にのぼることも、同調査ではわかった。

   調査によると、「線状降水帯による大雨の可能性がある場合、大雨警報などに先駆けた発表で、早期の備えを促すために、半日程度前から6時間前までに気象情報で発表しているのを知っていますか」(n=914)と聞いたところ、「知っている」と答えた人は50.9%だった。「知らない」と答えた人は49.1%で、ほぼ半々だった。

   さらに、「住まいの地域で線状降水帯が発生すると予報された場合、危機感を感じて、なんらかの対策を取りますか」との問いには、「危機感を感じて対策をする」と答えた人が55.0%で最も多かった。

   「危機感を感じるが対策はしない」と答えた人は38.8%、「危機感を感じない」人は6.1%だった。「危機感を感じる」人は9割超にのぼった。【図8参照】

図8 線状降水帯の発生に危機感を感じる人は9割超も、「危機感を感じるが対策はしない」という人が約4割にのぼる(一条工務店調べ)
図8 線状降水帯の発生に危機感を感じる人は9割超も、「危機感を感じるが対策はしない」という人が約4割にのぼる(一条工務店調べ)

   また、自宅の近辺に河川がある554人に「台風や豪雨の際、河川の氾濫による水害を心配しますか」と聞いたところ、「少し心配」と答えた人が47.3%で最多だった。

   「とても心配」という人(41.9%)と合わせると、9割近くが自宅近辺の河川の氾濫による水害を心配していることがわかった。「心配したことはない」と答えた人は10.8%だった。【図9参照】

図9自宅の近辺に河川がある人の約9割が台風や豪雨の際、河川の氾濫による水害を心配している(一条工務店調べ)
図9自宅の近辺に河川がある人の約9割が台風や豪雨の際、河川の氾濫による水害を心配している(一条工務店調べ)

河川の水害に遭わなくて済む「距離」はどのくらい?

   住まいについて、「河川から自宅が何キロメートル離れていれば水害に遭わなくて済むと思いますか」(n=914)と聞いたところ、47.7%の人が「10キロメートル以上」離れていれば、水害に遭わないと思っていることがわかった。次いで、「4~6キロメートル」が26.5%、「1~3キロメートル」の12,3%が続いた。【図10参照】

図10 約半数の人が河川から自宅が「10キロメートル以上」離れていれば水害に遭わないと思っている(一条工務店調べ)
図10 約半数の人が河川から自宅が「10キロメートル以上」離れていれば水害に遭わないと思っている(一条工務店調べ)

   調査ではさらに、市街地で排水が雨量に追い付かず発生する「内水氾濫による浸水被害が、河川の氾濫による被害より多いことを知っていますか」(n=914)と聞いたところ、50.7%と半数を超える人が「知らない」と答えた。わずかだが、「知っている」(49.3%)と答えた人を上回った。

   また、台風や豪雨のときに「住んでいる地域で避難指示が出た場合、速やかに避難しますか」(n=914)と聞いたところ、「速やかに避難する」と答えた人は17.6%で、2割弱にとどまった。

   64.4%の人が「様子を見て避難する」と回答し、最も多かった。「できれば避難しない」が12.5%、「避難しない」という人は5.5%で、これらを合わせて8割以上の人が「速やかに避難をしない」ことがわかった。【図11参照】

図11 地域で避難指示が出た場合、「速やかに避難する」人は17.6%にとどまった(一条工務店調べ)
図11 地域で避難指示が出た場合、「速やかに避難する」人は17.6%にとどまった(一条工務店調べ)

速やかに避難しない理由 最多は「自宅が安全だと思っているから」

   さらに、「様子を見て避難する」「できれば避難しない」「避難しない」と答えた753人に、速やかに避難しない理由を聞いたところ、最も多かったのは「自宅が安全だと思っているから」で、42.9%にのぼった。

   次いで、「近所の人が避難したらする」と答えた人が20.1%、「ペットがいるから」の18.2%が続いた。「どこに避難したらよいかわからない」と答えた人も、17.5%いた。【図12参照】

図12 「速やかに避難しない」理由の第1位は「自宅が安全だと思っているから」(一条工務店調べ)
図12 「速やかに避難しない」理由の第1位は「自宅が安全だと思っているから」(一条工務店調べ)

   国際災害レスキューナースで一般社団法人 育母塾代表理事の辻直美さんは、

「避難指示が出ていても『速やかに避難しない』を選んだ人が8割以上おり、その理由が『自分の家が安全と思う』ということに正直驚きました。もちろん、そう言えるのは自分の家が災害に強い家であることに絶対的な自信があるからだと思われます。しかし、それが自分の期待と実際にズレがあっては命に関わります」

   とコメントを寄せている。

   提供される気象情報や注意報などの意味や、その情報を的確な判断につなげていくことが必要。「災害時は日常やっていることしかできません。準備が足りていないようなので、もっと関心を持って行動に繋げていくかが課題だと感じています」としている。

   なお、調査は全国の男女を対象に、2023年7月8日~17日にインターネットで実施した。有効回答者数は914人(男性314人、女性600人)で、内訳は、20代が103人、30代357人、40代214人、50代148人、60代81人、70代以上が11人。

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