緩やかな「経済成長」と「インフレ鈍化」が併存する「適温経済」が続けば...
さて、FRBの今後の金融政策が利上げから高金利政策の維持にシフトした、と指摘するのは、野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之氏だ。
石黒氏はリポート「ジャクソンホール後の米金融政策を展望する」(8月28日付)のなかで、自然利子率とFF金利誘導目標上限値などのグラフを示しながら、現在の実質FF金利が自然利子率を上回っている現状を説明した【図表1】。
「現在の米金融引き締めの度合いをみると、6月時点の実質FF金利は1.15%とインフレ率を目標水準で維持し、経済を完全雇用状態に保つような、緩和的でもなく引き締め的でもない実質金利である自然利子率(直近0.58%)を大きく上回っています【図表1】。
7月にFRBが0.25%の追加利上げを行なったことを踏まえると、実質FF金利はさらに上昇しているとみられ、米国の金融政策は相当程度に引き締め的な水準にあるといえます」
そして、こう結んでいる。
「過去の事例に照らし合わせると、米国の利上げ停止時期は近づきつつあると考えられます。現在のような緩やかな『経済成長』と『インフレ鈍化』が併存する『適温経済』が続くのであれば、FRBの視点は利上げから高金利政策維持にシフトしそうです」