市場のコンセンサスは、9月追加利上げ見送り...11月に最後の利上げ
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏も、リポート「予想通りのタカ派的発言となったジャクソンホールでのパウエル議長講演:中立金利への言及は避ける」(8月28日付)のなかで、中立金利への言及がなかった背景をこう説明した。
「今回の講演で金融市場が注目していたのは、パウエル議長の金利の中立水準への言及だ。直前には、ニューヨーク連銀は金利の中立水準が大きく上昇した可能性を示す分析を示していた。パウエル議長がこの分析結果を追認する場合には、景気を抑制するためにFRBの追加利上げ余地が広がることになることから、金融市場はそれを強く警戒していた。
しかしパウエル議長は、『中立金利を確実に特定することはできないため、金融引き締めの正確な度合いは不確実である』と述べるに留め、中立水準上昇の可能性について明確な判断を示すことを避けた」
「さらにパウエル議長は、『2%の物価目標は変わらない』とも明言し、物価上昇率のトレンドが切り上がったことを受けて物価目標を引き上げるべきとの一部の議論に距離を置く姿勢を強調した」
そして、こう結んだ。
「このように、パウエル議長は理論や分析に基づく政策よりも、実際に出てくる経済指標に応じて柔軟に金融政策を運営する、プラグマティックな政策姿勢を採用することを改めて強調したのである」
木内氏は、この結果、市場では9月の追加利上げ見送りとの見方が高まり、11月に最後の利上げがコンセンサスになったとしている。