食品会社の「最大の取引先」は中国市場
こうしたなか、特に問題なのは「食品分野」の企業で、中国市場に依存する割合が高いことだ。【図表3】は、各分野の輸出企業1社あたりで、自社の販売額のうち中国向け販売(輸出)が占める割合を示している。
これをみると、全産業の平均は1社あたり42.8%だが、とりわけ、近年の日本食ブームを背景に中国向けの販売が伸びる「食品分野」では1社平均で約6割(55.9%)にも達している。「機械・設備」(34.6%)や「アパレル」(35.5%)など他産業に比べて割合が突出して大きい。全業種に比べても高く、中国向けへの比重が高い傾向がみられた。
さらに、日本産食品への高い知名度や購買力などを背景に食品の輸出先として重要度が高まっている香港では、「食品分野」の占める割合が12.0%(316社)と1割を超えた【再び図表2】。
このうち、水産品関連を主業とする企業は香港向け輸出企業全体の2.1%(56社)と、数こそ少ないものの、販売額のうち香港向けが占める割合はいずれも大きかった【再び図表2】。
今回の「日本産水産品の全面禁輸」措置が、中国市場に頼る食品会社にとって、いかに大きな打撃となったか。帝国データバンクではこうコメントしている。
「中国への食品輸出をめぐっては、従前から中国国内で人気の高いナマコなどのほか、日本食ブームを背景に日本産食品の対中輸出が近年大きく拡大してきた。実際に、中国へ直接・間接的に輸出を行う食品関連企業は、対中輸出全9270社のうち700社超におよぶ。
1社あたりの取引における中国向けの割合も50%を超える企業が多いなど、『最大の得意(販売)先』として中国市場の存在感は大きい。そのため、国内の食品輸出業者に加え二次・三次取引などを含めたさらに多くの企業で甚大な影響が及ぶとみられ、国内市場や代替輸出先の確保といった措置が急がれる」
(福田和郎)