「心理的安全性」に注目する企業
「週刊東洋経済」(2023年9月2日号)の特集は、「心理的安全性 超入門」。耳慣れない言葉だが、最強の組織を目指すうえで、企業が注目し始めた概念だ。「ブラック企業」はもちろん、「ゆるい職場」もダメ! だというのだが。
「心理的安全性」とは、組織行動学を研究するエイミー・C・エドモンドソン氏が1999年に提唱した心理学用語だ。
組織内で自分の考えや気持ちを、誰に対しても安心して発言できる状態を指す。心理的安全性の高い状態が確保されている組織では、絶えず情報が四方八方に流れている。その結果、独創的なアイデアが生まれ、事業におけるイノベーションも起きやすい。
日本企業が今直面している閉塞感を打ち破る要因の1つになるかもしれない、と指摘している。
心理的安全性を意識した経営を実践し、全社参加型プラットフォーム「Unipos(ユニポス)」を提供するUniposの田中玄社長は、あなたの会社が心理的安全性を確保しているかどうかのチェックリストを以下のように挙げている。
・自社やサービスの理念・コンセプトなどに共感している
・自分と上司、チーム内の人間関係は良好である(話しやすさ)
・困ったときや悩んだとき、トラブルなどのネガティブな事象が起きたとき、相談したり頼ったりすることに心理的負担がない(助け合い)
・仕事を通じて成長している手応えがある(挑戦)
・前例のないアイデアを言ったり、異質さがあったりしても受け入れられる(新奇歓迎)
・働く仲間について興味がある/知るすべがある
「心理的安全性 最強の教科書」などの著書がある、プロノイア・グループCEO・代表取締役のピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、心理的安全性とは、次の2つが実現している状態だと定義している。
・メンバーがネガティブなプレッシャーを受けずに自分らしくいられること
・お互いに高め合える関係を持って、建設的な意見の対立が奨励されること
心理的安全性に着目し、本格的にその向上に取り組み始めた企業もある。スナック菓子大手のカルビーだ。2022年から、課長以上の管理職全員に研修を実施。今年8月、研修の対象を全社員に拡大することを決めた。全16回の研修を全員必須として取り組む。
心理的安全性を高めることは、社員同士の仲がいい、ゆるいだけの職場を目指すものではなく、健全な意見の対立があり、しっかり緊張感もある組織風土だという。
みずほフィナンシャルグループもシステム障害を機に奮起し、企業風土の変革に取り組んでいるという。若手社員が社長に直言する「リバースメンター」などを行い、風通しのいい組織を目指している。
ヒット製品開発の裏にある心理的安全性について、早稲田大学商学部の村瀬俊朗准教授が解説している。今まで組み合わさったことのない要素をいかに組み合わせるか、その組み合わせパターンの幅を作ることがヒットにつながるそうだ。
会議のとき、「こんな話をしても、もうしょうがないよ」と、それ以上の発言を遮る人を放置してはいけない、と指摘している。どうしようもないアイデアを数多く検討することが大切だからだ。