令和のゴールドラッシュ! 金価格、初の1万円超え 安全資産、円安が要因

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   連日高値を更新していた金の価格(円建て)が、とうとう1万円(1グラムあたり)を突破した。

   地金商最大手の田中貴金属工業が公表した2023年8月29日の店頭小売価格(税込み)は、1グラム=1万1円となった。前日から28円の値上がりで、円建て価格として、初めて1万円の大台に乗せた。

4日連続、151円も上昇

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グラフは、土日・祝日を除く9時30分の公表の店頭小売価格(税込み)の推移(出典:田中貴金属工業)

   ここ数日の金価格(店頭小売価格)の上昇は、目を見張るものがあった。

   1週間前の8月22日に前日比98円もの上昇で9753円をつけると、その翌日は反動でやや下がったが、24日から4日連続して急騰。28日には9973円と1万円が目前に迫り、29日にあっさり超えた。4日間で151円も値上がりした。

   金の価格が、29日に1万円の大台をつけた背景には、円安がある。金は、国際的にドル建てで取引されるため、外国為替市場でドル円相場が1ドル=146円台に値下がり。円安ドル高が進んでいることが大きな要因とみられる。

   また、金は「有事の金」といわれ、戦争や災害など世界経済を揺るがすような事態が発生すると、需要が高まる傾向がある。

   ロシアによるウクライナ侵攻から1年半が過ぎ、戦争終結の見通しや、外交や経済での中国をめぐる情勢が不透明なこと、世界的な景気の減速懸念もあって、「安全資産」とされる金が選好されていることも後押ししている。

「円が売られて、金が買われている」

   「金価格、1万円突破」のニュースが流れると、ヤフートピックスなどには多くの専門家らの声が寄せられた。

   日本総合研究所調査部長でチーフエコノミストの石川智久氏は、

「(金は)有事の金といわれ、国際情勢の不透明感が高まると買われる傾向があります。さらに円安も国内価格を押し上げています。一方で、金は債券や株のような利息・配当がないというデメリットがあります。現在、欧米では金利が高水準となるなか、金から債券に資金が流れる可能性があり、金の高値に警戒感があるのも事実です。買い材料も売材料もあるなか、先行き難しい相場状況と言えます」

   と、金相場の状況を説明する。

   また、同じくヤフーニュースコメント欄では、マーケットエッジの代表取締役で商品アナリストの小菅努氏は、

「ここ数年、金価格が過去最高値圏で推移していますが、各国通貨建ての値動きに違いが生じています。8月でいえば、米国の高金利政策が長期化するとの観測から米長期金利上昇・ドル高がドル建て金価格を抑えています。一方、その米国の高金利政策が円安(ドル高)を促していることが、円建て金価格の高騰を促しています。
さらに、その底流にあるのは各国中央銀行と日本銀行の政策スタンスの違いです。米欧などではインフレ抑制のために利上げを含む金融引き締めが実施されていますが、日本においては逆に金融緩和が継続しています。国内では高いレベルのインフレ圧力が続き、さらに実質賃金のマイナス状態が固定化するなど、円の購買力の喪失が顕著になっています。
金価格の高騰は、金投資家にとっては好ましい値動きですが、それだけ日本の通貨環境が厳しさを増している証左とみるべきでしょう。換言すれば、円が売られて、金が買われているのです」

   と、円安の深刻さに言及した。

   さらに、Market Strategy Institute Inc.代表で、金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は、一般社団法人 日本金地金流通協会の「市況解説」の「堅調に推移するドル建て価格に円安、国内店頭小売価格初の1万円台」(2023年8月29日付)のレポートで、こう指摘した。

「ドル円相場がややドル高方向に進展し、一時146.75円と2022年11月上旬以来のドル高(円安)となった。追加利上げを依然として視野に入れているFRB(米連邦準備制度理事会)に対し、日銀は金融緩和の継続方針を示しており、金融政策の方向性の違いを意識した円売りが続いた。
その結果、金の国内円建て価格は、連日過去最高値の更新となっており、大阪取引所の先物価格は28日一時9050円と取引時間中の過去最高値を更新。こうした流れの中で、29日午前に発表された主要地金商の店頭小売価格も税込みで初めて1万円を突破した。グラム単価1万円は節目の価格ではあるものの、ドル建て国際価格を日々のドル円相場により換算したものであり、値動きの主導権はドル建て価格が握っている」

   いまの金価格のゆくえは、「ドル円相場」が握っているということのようだ。

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