【よくわかる新規上場株】AI企業のAVILEN(アヴィレン)ってどんな会社? 大手企業が相次いで資本業務提携を締結

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   就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?

   上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、2023年8月22日に東証グロース市場への新規上場が承認されたばかりのAIソリューション企業、AVILEN(アヴィレン)です。

   AVILENの創業は2018年ですが、2016年7月からウェブメディア「全人類がわかる統計学」を運営し、統計学を中心とした学習教材を300近く掲載。このメディアが2020年にAI特化型メディア「AVILEN AI Trend」へと進化します。2019年には一般社団法人日本ディープラーニング協会の認定を受けたAI資格対策講座「全人類がわかるE資格講座」を開始しました。

   2021年4月に三菱UFJ銀行などと共同開発したビジネスユーザー向けデータ分析ツール「AI Seed」を公表、2022年2月に「AI Seed」の外販を開始します。その後、インテックや三菱UFJ信託銀行、日本郵政キャピタル、アイネット、大塚商会と相次いで資本業務提携を締結。2023年6月にはエアトリと旅行業界におけるAI利活用を推進するための戦略的パートナーシップを締結しています。

主要顧客は三菱UFJ信託銀行

   それではまず、AVILENの近年の業績の推移を見てみましょう。

   AVILENの売上高は順調に伸びています。5ヶ月決算の2020年12月期は伸長スピードが落ちていますが、翌2021年12月期には約4.8億円、2022年12月期は約7.3億円と、創業から数年で急速に売上を伸ばしています。

   営業利益率も、2020年12月期は最終赤字となったものの、2021年12月期は17.6%、2022年12月期は15.1%と、売上急増期にもかかわらず手堅く利益を確保しています。

   2022年12月期の主要な顧客は三菱UFJ信託銀行で、売上高は1億0435万円、売上全体の14%を占めています。

   2023年12月期第2四半期累計期間の売上高は3億9181万円、営業利益6503万円、四半期純利益4694万円と、順調に推移しています。

ChatGPTの安全で効果的なビジネス活用をサポート

   AVILENは「AIソリューション事業」の単一セグメントで、「AIソフトウェアユニット」と「ビルドアップユニット」の2つのサービスを提供しています。

   AIソフトウェアユニットでは、自社開発技術コアモジュール(アルゴリズムの集合体)「AVILEN AI」を活用し、クライアントのビジネスプロセスへのAI実装や、データ利活用を支援します。代表的なコアモジュールとソリューションは、以下の通りです。

・「Genea」画像やパッケージデザインを自動生成(開発事例:画像生成、パッケージデザイン生成)
・「Extractea」ChatGPTなどのLLMを扱い自然言語処理(開発事例:「ChatMee」)
・「Cogneo」手書き文字や非定型帳票、図面等をデジタル化(開発事例:機械部品の図面認識、広告チラシのデジタライズ化)
・「Findia」インフラ等建造物の異常・損傷を検知(開発事例:大型設備の点検自動化、ケーブル異常検知)
・「Estimea」時系列データを分析し予測(開発事例:「AI Seed」、パッケージデザイン分析)

   代表的なソリューションのひとつである「ChatMee」は、情報セキュリティとデータの秘匿性が保証された法人向けChatGPT活用プラットフォームです。

   「ChatMee」に入力されたデータはChatGPT本体の学習に使用されず、専用のサーバーとセキュアな通信環境を構築することで、高いセキュリティを担保。アカウント管理により社員の利用履歴やデータ入出力を一元管理できます。

   AVILENは、2023年7月から「ChatMee」を三菱UFJ信託銀行に提供。ChatGPTの安全かつ効果的なビジネス活用をサポートしています。

自社メディア「AI Trend」でリード獲得

   もうひとつのサービスであるビルドアップユニットでは、クライアントの組織アセスメントやロードマップの策定、経営者や従業員、経営企画やエンジニア等部門横断的なAI人材の育成による組織開発を支援するとともに、両ユニットにまたがるD&Aコンサルティングを行います。

   なお、D&Aコンサルティングとは「データおよびアナリティクスと事業戦略策定のつなぎ込み」を行うコンサルティングのこと。ビルドアップユニットの主なサービスメニューは、以下の通りです。

・組織開発戦略:DXリテラシーアセスメント、AI/DX組織開発ロードマップ
・全社員向け:ChatGPTビジネス研修、DXリテラシー研修
・ビジネスパーソン向け:データ活用研修、AutoMLで学ぶデータ分析実践研修、AIビジネス研修、G検定対策講座、DS検定対策講座
・エンジニア向け:データサイエンティスト研修、機械学習講座、E資格講座、ディープラーニング領域特化研修、データ分析コンペティション研修、AIエンジニア武者修行研修

   2022年12月期の外部顧客への売上高におけるセグメント別構成比は、ビルドアップユニットが4億6703万円で63.8%を占め、AIソフトウェアユニットが2億6505万円でした。

   ビジネスモデルは、自社メディア「AI Trend」でリード顧客を効率的に獲得し、ビルドアップユニットで顧客とのリレーション構築を行い経営課題を特定しつつ、AIソフトウェアユニットでの取引につなげており、創業以来上場企業を中心に累計530社以上の企業と取引があるそうです。

社員の平均給与は543万円、創業者はすでに退任

   AVILENの2023年7月末の従業員数は50人、平均年齢は29.6歳、平均勤続年数は1.6年。平均年間給与は543.5万円でした。

   AVILENの採用サイトを見ると、21件の求人が掲載されています。うち5件はインターン、1件は新卒採用(データサイエンティスト)。残りはキャリア採用で、エンジニア、プロジェクトマネージャーから、コンサルタント、営業、法人カスタマーサクセス、経理、人事など幅広い職種で募集が行われています。

   ソリューション営業マネージャー候補の場合、DXソリューションプランナーチームに所属し、想定年収は700~1000万円。年2回の給与見直しで、昇給の可能性もあります。労働時間はコアタイムなしのスーパーフレックス制(5:00~22:00)で、原則出社ですがリモートワークは申請によりフレキシブルに可能とのことです。

   なお、AVILENは日本郵政および日本郵政キャピタルの関係会社で、日本郵政キャピタルはAVILENの株式総数の20.95%を所有し、大株主の2位となっています(1位と4位はジャフコ系のファンド、3位は大塚商会)。

   AVILENの創業者である崔一鳴氏は1994年生まれ。東京工業大学大学院在学中にAVILENを創業し代表取締役に就任しましたが、2021年末に退任。2023年に教育プラットフォーム企業「Astran」を創業し代表取締役に就任しています。2023年8月22日現在で株式総数の6.4%を所有しています。

   現代表取締役社長の高橋光太郎氏は1995年生まれ。東京大学大学院で機械学習による即時的な津波高予測の研究に従事。AVILENの創業メンバーで、共著書の「最短突破 ディープラーニングG検定(ジェネラリスト)問題集」(技術評論社刊)は累計1万部を突破しているとのことです。(こたつ経営研究所)

こたつ経営研究会
こたつ経営研究会
有価証券報告書や決算説明書などの公開情報を分析し、会社の内情に思いをめぐらすニューノーマルな引きこもり。昼間は在宅勤務のサラリーマンをしながらデイトレード、夜はネットゲームをしたりこたつ記事を書いたりしている。好きなピアニストはグレン・グールド。嫌いな言葉は「スクープは足で稼げ」。
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