会社で初めて泣いた夜
オンライン会議ができる会議室で深夜の監査法人とのやりとりが始まりました。口火を切ったのは、上司の大島さん。ところが、大島さんの説明は正味1分程度。とても短いシンプルなもので、監査法人サイドからは1つの質問もなく、「わかりました」の一言のみ。一瞬の出来事でした。
会議室から出た瞬間、木村さんの目からは涙が溢れ出て止まりませんでした。
自分が何日もかけて説明して解決できなかったことが、大島さんだと1分で終わり。自分の何が足りなかったのかと、悔しくて悔しくて仕方がなかったのです。
「この悔しさを絶対忘れないようにね」。上司の大島さんは、一言だけ声を掛けたのです。
後日、この出来事について上司の大島さんは次のように語っています。
「当時の彼女には、リーダーとしてプロジェクトの統括を任せていました。どんな仕事もそうですが、リーダーの責務は、いろんな人が最後にしっかり納得できる結末に持っていくこと。ゴール設定やそこまでの段取り、プロジェクト全体の交通整理、自身の頭の中の整理など、たくさんのことをこなさないといけません。メンバーからリーダーとしての発想の切り替えが必要な時期だったんです」
この試練も木村さんにとっては、一皮むける節目になりました。上司の大島さんはそのことを想定しながら見守り、木村さんに対してもキャリア形成の意味づけしているのです。