経験もスキルもない若手の「目力(めぢから)」と素直さで採用即決
起業してまだ間もない、IT系スタートアップ企業のA社に採用された20代女性の木村さん。新卒でSE(システム・エンジニア)として就職した前の会社で、業務上の必要から企業会計の面白さに触れ、すっかり魅了されました。そこで一念発起。1年半で退職し、転職活動を経て経理職としてA社へ入社します。
木村さんが身につけていたのは簿記の基礎程度。しかし、彼女と面接し、後の上司となる40代男性部長の大島さんは、一瞬で木村さんの目力と素直さで採用を即決します。スキルや経験はないものの、彼女の芯の強さとひた向きさを見抜いたからです。今持っている実務力より、大きな『伸びしろ』にかけたのです。
入社後ほどなくして、大島さんは木村さんの直属上司に。実は大島さんは、公認会計士資格を持ち、経験も豊富な経理のプロ。しかし、大島さんは木村さんに業務知識を、手取り足取り教えませんでした。
「これってわかる?」と投げかけ木村さんが戸惑うと、「次に聞くまでに分かるようにしておいて」と宿題を与えます。負けず嫌いの木村さんは「わかりません」と言うのは悔しいので、会計テキストや過去の資料を読み込み、必死で食らいついていきました。
大島さんは木村さんの習熟度合を見ながら、少しずつ与える仕事の難易度を上げていきます。木村さんもたびたびの困難を歯を食いしばり、乗り越えました。入社3年経つ頃には、経理実務のプロとして大きく成長を遂げていきます。
ところが、その先には、さらに厳しい試練が待っていたのです。